興奮の伝導と伝達

ニューロンは、樹状突起で入力を受け、細胞体で足し合わせ、軸索で運び、終末で次の細胞へ渡す細胞です。この図はその 1 個ぶんを、刺激を打ってから次の細胞に電位が生まれるまで、ひとつづきに動かしています。

樹状突起に届いた電位は受動的に広がり、細胞体へ集まります。弱い刺激は 1 発では閾値に届きませんが、続けて 2 発打つと、1 発目が消える前に 2 発目が乗って足し合わさります。これが時間的加重です。別々の枝へ同時に届いたものが足し合わさるのが空間的加重です。

足し合わせた電位が閾値を越えるかどうかを決めるのは軸索小丘で、Na⁺ チャネルの密度がいちばん高いところです。越えなければ何も出ていかず、越えればいつも同じ大きさの活動電位が出ます。強い刺激で活動電位が大きくなるのではなく、早く出るだけです。これが全か無かの法則です。

活動電位は Na⁺ が流れ込んで立ち上がり、少し遅れて K⁺ が流れ出して戻ります。この 2 つの時間差が、そのまま山の幅になります。

軸索を伝わるのは、脱分極したところが隣へ電流を流し、そこが閾値に届いて自分のチャネルを開くからです。無髄の軸索はこれを 1 区画ずつくり返すので、じりじりとしか進みません。

髄鞘は膜を何重にも巻いた絶縁体で、覆われた区間はほとんど電荷をためず、ほとんど漏らしません。膜を充電するのに費やされるはずだった電流が、そのまま先へ流れます。チャネルはランビエ絞輪にしかないので、電流が作られるのも絞輪だけです。図の光が絞輪でしか立たないのはそのためで、これを跳躍伝導といいます。操作パネルで髄鞘を外すと、同じ軸索が数倍遅くなります。

興奮が逆へ戻らないのは、通り過ぎたばかりの膜が不応期にあるからです。不活性化ゲートが閉じているあいだは、どれだけ刺激しても次の活動電位は出ません。

終末に届くと Ca²⁺ チャネルが開き、流れ込んだ Ca²⁺ が引き金になって、小胞が膜と融合し伝達物質を間隙へ出します。渡りきった伝達物質が受容体を開き、次の細胞に電位が生まれます。計測パネルのシナプス遅延は、この化学の段にかかる時間です。

小胞は中身を全部出すか出さないかのどちらかなので、出る量はいつも小胞 1 個ぶんの整数倍になります。これを量子的放出といい、計測パネルの放出量子数はその個数をそのまま数えたものです。すぐ放てる小胞の数には限りがあり、立て続けに刺激すると戻るより早く使われて、応答が小さくなっていきます。この減りがシナプスの疲れです。

間隙に残った伝達物質は受容体を開かせ続けるので、そのままでは信号が終わりません。酵素が壊し、終末が吸い戻して片づけます。どちらかを止めると応答が長引きます。Ca²⁺ チャネルか融合そのものを止めれば放出が起きなくなり、受容体を塞げば、放出は起きているのに向こう側で何も起きません。操作パネルの阻害薬はそれぞれ別の段を止めるので、どこが止まったかは図を見れば分かります。

受容体が何を通すかで、応答の向きが決まります。陽イオンなら膜は 0 mV へ引かれて電位が上がり、これが EPSP です。Cl⁻ なら静止電位より低いところへ引かれて下がり、これが IPSP です。操作パネルで抑制性に切り替えると、ほかは何も変えないまま応答だけがひっくり返ります。

生まれた電位は閾値にはるかに届きません。実際のニューロンは何千ものシナプスを受けていて、その多くが時間と場所を揃えたときにだけ発火します。1 つのシナプスでは足りない、ということがそのまま見えます。

左上の部位パネルで部位を選ぶと、図に枠が付いて解説が変わります。図を直接押しても選べます。左下の操作パネルで刺激を打ち、髄鞘を着け外しし、抑制性への切り替えと 5 種類の阻害薬も試せます。右下の計測パネルに伝導速度・放出量子数・小胞プール・シナプス遅延が出ます。パネルはヘッダーを掴んで動かせ、四辺と四隅で大きさを変えられます。タイトルをダブルクリックすると、右上の定位置に固定されます。