司法試験 短答式 2022 憲法 第10問
国家賠償請求に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.18]から[No.20])
- ア 公務員の不法行為について国又は公共団体に対し損害賠償を求める権利について、憲法第17条は、「法律の定めるところ」による旨を規定している。これは、公務員のどのような行為によりいかなる要件で損害賠償責任を負うかを立法府の政策判断に委ねたものであって、立法府に無制限の裁量権を付与しているわけではない。
- イ 公務員がその職務を行うに当たり、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた場合、国は当該公務員に代位して賠償責任を負う。しかし、国会議員には憲法第51条で発言及び表決に対する免責特権が保障されているから、議員が国会で行った質疑等において個人の名誉を毀損する発言を行っても責任を問われることはないので、国が賠償責任を負うこともない。
- ウ 国会議員の立法行為の国家賠償法上の違法の問題と立法内容の違憲の問題とは区別されるし、本質的に政治的なものである立法行為の適否を法的に評価するべきではない。したがって、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害することが明白な場合であっても、国会議員の立法行為が国家賠償法上の違法の評価を受けることはない。
- 1 正しい
- 2 誤っている
正答 1,2,2(配点 3)
参考
正解はア=1、イ=2、ウ=2。ア:憲法17条は「法律の定めるところにより」と定めるが、これは公務員のどのような行為によりいかなる要件で損害賠償責任を負うかを立法府の政策判断に委ねた趣旨であって、立法府に無制限の裁量を付与したものではない(郵便法違憲判決)。記述はその趣旨どおり。イ:憲法51条の免責特権は国会議員個人の責任を免ずるものであって、国の賠償責任を当然に排除するものではない。判例も、国会議員が国会の質疑等において個別の国民の名誉を毀損した場合に、国が賠償責任を負う余地を認めている(ただし国家賠償法上違法となるのは、職務とは関わりなく違法または不当な目的をもって事実を摘示するなどの特別の事情がある場合に限られる)。ウ:判例は、立法の内容が違憲であることと立法行為が国家賠償法上違法であることとは区別されるとしつつ、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合等には、例外的に国家賠償法上違法の評価を受けるとしている(在外国民選挙権訴訟)。およそ違法の評価を受けることはないとする記述は誤り。
自作の解説(憲法第17条・第51条、国家賠償法第1条および最高裁判例に基づく)
関連条文
関連判例
- 在外国民選挙権訴訟(最大判平成17年9月14日民集59巻7号2087頁)
- 在宅投票制度廃止事件(最判昭和60年11月21日民集39巻7号1512頁)
- 郵便法違憲判決(最大判平成14年9月11日民集56巻7号1439頁)
出典 法務省 令和4年司法試験 短答式試験 問題集[憲法]第10問/憲法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00104.html