司法試験 短答式 2022 憲法 第15問

内閣及び内閣総理大臣に関する次のアからウまでの各記述について、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.29]から[No.31])
  1. 最高裁判所の判例の趣旨に照らすと、内閣総理大臣は、憲法第72条に規定された行政各部の指揮監督権限を閣議にかけて決定した方針に基づいて行使する必要があり、行政各部に対してその所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与えたとしても、内閣としての事前の方針決定がなければ、事実上の影響力を行使したものにすぎず、内閣総理大臣の職務権限に属するものではない。
  2. 内閣は憲法第73条第1号により法律を誠実に執行する義務を負っているが、最高裁判所が違憲と判断した法律については、国会がこれを改廃する前であっても、内閣は、その執行を差し控えることができる。
  3. 憲法には内閣に法律案の提出権を認める規定はないものの、憲法では議院内閣制が採用されていることや、内閣に法律案の提出権を認めたからといって当然に国会の議決権が拘束されるわけではないことは、法律で内閣に法律案の提出権を付与することが憲法上禁じられていないと解する根拠となり得る。
  1. 1 正しい
  2. 2 誤っている

正答 2,1,1(配点 3)

参考

正解はア=2、イ=1、ウ=1。ア:ロッキード事件丸紅ルート上告審は、内閣総理大臣が憲法72条・内閣法6条により行政各部に対する指揮監督権を有し、その行使には閣議にかけて決定した方針が必要であるとしつつ、閣議にかけて決定した方針が存在しない場合においても、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有するとした。事前の方針決定がなければ職務権限に属さないとする記述は判例の趣旨と異なる。イ:憲法98条1項により憲法に違反する法律は効力を有せず、最高裁判所が違憲と判断した法律を内閣が執行することは、かえって憲法尊重擁護義務(99条)に反する。国会による改廃を待たずに執行を差し控えることができると解される。ウ:内閣の法律案提出権について憲法に明文はないが、議院内閣制が採用されていること、内閣に提出権を認めても国会の議決権が拘束されるわけではないことは、内閣法5条による付与が憲法上禁じられていないと解する根拠となり得る。

自作の解説(憲法第72条・第73条・第98条、内閣法および最高裁判例に基づく)

関連条文

関連判例

出典 法務省 令和4年司法試験 短答式試験 問題集[憲法]第15問/憲法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00104.html