司法試験 短答式 2022 憲法 第5問
表現の自由に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして、正しいものには○、誤っているものには×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No.9])
- ア ビラの配布のために集合住宅の共用部分及び敷地内に管理権者の承諾なく立ち入って、その管理権やそこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害したとしても、ビラの内容が政治的意見を記載したものであれば、表現の自由の行使として尊重されるべきであるから、当該立入り行為を刑法第130条前段の罪に問うことは憲法第21条第1項に違反し、許されない。
- イ 公立図書館は、住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場であり、図書の著作者にとっては、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるから、図書の著作者は、公立図書館に対して表現の自由に基づいて自らの著作物を購入し、閲覧に供するよう求めることができる。
- ウ 報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報道のための取材の自由も憲法第21条の精神に照らして十分尊重されなければならず、取材源の秘密は、取材の自由を確保するために必要なものとして重要な社会的価値を有するから、報道機関の記者が民事訴訟で証人として尋問された場合、取材源に関する証言の拒絶は、それによって真実発見及び裁判の公正が犠牲になるとしても、直ちに認められなければならない。
- 1 ア○ イ○ ウ○
- 2 ア○ イ○ ウ×
- 3 ア○ イ× ウ○
- 4 ア○ イ× ウ×
- 5 ア× イ○ ウ○
- 6 ア× イ○ ウ×
- 7 ア× イ× ウ○
- 8 ア× イ× ウ×
正答 8(配点 2)
参考
正解は8(ア×、イ×、ウ×)。ア:立川反戦ビラ事件は、管理権者の意思に反して集合住宅の共用部分等に立ち入る行為は、たとえ政治的意見を記載したビラの配布が目的であっても、私的生活の平穏を侵害するものとして刑法130条前段の罪に問うことができ、憲法21条1項に違反しないとした。イ:船橋市西図書館事件は、公立図書館が著作者にとってもその思想・意見等を公衆に伝達する公的な場であるとし、著作物が不公正に廃棄された場合の著作者の人格的利益を法的保護に値するとしたが、著作者が図書館に対して自らの著作物の購入や閲覧提供を求める権利までは認めていない。ウ:NHK記者証言拒否事件は、取材源の秘密が民事訴訟法197条1項3号の職業の秘密に当たり得るとしつつ、証言拒絶が認められるかは、秘密の公表によって生ずる不利益と、証言拒絶によって犠牲になる真実発見・裁判の公正とを比較衡量して決するとした。証言拒絶が「直ちに」認められるわけではない。
自作の解説(憲法第21条、刑法第130条、民事訴訟法第197条および最高裁判例に基づく)
関連条文
関連判例
- NHK記者証言拒否事件(最決平成18年10月3日民集60巻8号2647頁)
- 立川反戦ビラ事件(最判平成20年4月11日刑集62巻5号1217頁)
- 船橋市西図書館事件(最判平成17年7月14日民集59巻6号1569頁)
出典 法務省 令和4年司法試験 短答式試験 問題集[憲法]第5問/憲法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00104.html