司法試験 短答式 2023 憲法 第6問
財産権の保障に関する次のアからウまでの各記述について、bの見解がaの見解の批判となっている場合には1を、そうでない場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.10]から[No.12])
- ア
a 憲法第29条第1項と同条第2項を整合的に理解すれば、同条第1項は、法律で定める財産権の不可侵を規定したものということになる。
b 同条第1項が、法律で定める財産権を保障するにすぎないというのでは、憲法規範としての意義が著しく減殺されてしまう。
- イ
a 憲法第29条第1項が保障する私有財産制度とは、生産手段の私有を内容とする資本主義体制の保障を意味する。
b もし単に個人の生存に不可欠の物的手段のみを保障する趣旨ならば、社会主義国家の憲法と同様にその点を明示したはずである。また、憲法第22条第1項は、営業の自由を保障している。
- ウ
a 憲法第29条第1項が保障する財産権は、人間が、人間としての価値ある生活を営む上に必要な物的手段の享有を意味する。
b 基幹産業の国有化は、同条第3項の正当な補償を条件として、同条第2項の「公共の福祉」を実現する立法府の裁量に委ねられている。
- 1 bはaの批判になっている
- 2 bはaの批判になっていない
正答 1,2,2(配点 3)
参考
正解はア=1、イ=2、ウ=2。財産権(憲法29条)をめぐる複数の見解について、bがaの批判になっているかを問う。ア:aは29条1項を法律で定める財産権の不可侵を規定したものと読む立場。bは、そう読むと憲法規範としての意義が著しく減殺されると述べ、aの帰結を難点として指摘する批判になっている(1)。イ:aは1項の私有財産制度を生産手段の私有=資本主義体制の保障と解する立場。bは、個人の生存に不可欠な物的手段のみの保障なら社会主義国家の憲法のように明示したはずであり、22条1項も営業の自由を保障していると述べるもので、aを支える論拠であって批判ではない(2)。ウ:aは財産権を人間らしい生活に必要な物的手段の享有と解する立場。bは基幹産業の国有化が補償を条件に立法裁量に委ねられると述べるもので、aと両立し、これを敷衍する内容であって批判ではない(2)。学説の論理関係を問う問題で、判例は直接関係しない。
自作の解説(憲法第29条・第22条および学説に基づく)
関連条文
出典 法務省 令和5年司法試験 短答式試験 問題集[憲法]第6問/憲法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00198.html