司法試験 短答式 2023 刑法 第15問

文書偽造の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、正しいものはどれか。(解答欄は、[No.26])
  1. 1 公務員でない甲は、行使の目的で、情を知らない市役所の係員Aに虚偽の申立てをして、市長名義の虚偽の課税証明書を作成させた。この場合、甲に虚偽公文書作成罪は成立しない。
  2. 2 甲は、無免許で自動車を運転中に取締りを受けた際、かねてより知人Aから氏名等の使用の許諾を受けていたことから、Aの氏名等を称し、行使の目的で、交通事件原票中の供述書欄末尾に「A」と署名した。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
  3. 3 甲は、Aに100万円を貸し付けていたが、Aから借用書を徴していなかったため、行使の目的で、Aに無断で、甲から100万円を借用した旨のA名義の借用書を作成した。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
  4. 4 甲は、民間団体Aから国際運転免許証の作成を委託され、行使の目的で、外観が正規の国際運転免許証に酷似するA名義の文書を作成したが、Aに正規の国際運転免許証を発給する権限はなく、甲もそのことを知っていた。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
  5. 5 甲は、同姓同名の弁護士がいることを利用して弁護士を装い、不動産業者Aから土地調査の依頼を受け、行使の目的で、作成名義人として「弁護士甲」と記載した土地調査に関する書面を作成しAに交付した。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。

正答 1(配点 2)

参考

正解は1。1:公務員でない者が、情を知らない公務員に虚偽の申立てをして虚偽の内容の公文書を作成させても、虚偽公文書作成罪(刑法156条)の間接正犯は成立しない(公正証書原本不実記載等罪の限度で問題となるにとどまる)から、正しい。2は交通事件原票の供述書に他人名義で署名する行為は名義人の承諾があっても私文書偽造罪が成立する、3は他人名義の借用書を無断で作成する行為は私文書偽造罪に当たる、4は作成権限のない団体名義の国際運転免許証類似文書の作成は私文書偽造罪に当たる、5は同姓同名を利用して資格を偽り作成名義人の人格の同一性を偽る文書を作成する行為は私文書偽造罪に当たるから、いずれも成立しないとするのは誤り。

自作の解説(刑法第156条・第159条および判例に基づく)

関連条文

出典 法務省 令和5年司法試験 短答式試験 問題集[刑法]第15問/刑法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00198.html