司法試験 短答式 2023 刑法 第19問
背任罪に関する次の【判旨】についての後記1から5までの各【記述】のうち、正しいものはどれか。(解答欄は、[No.31])【判旨】刑法第247条にいう「本人に財産上の損害を加えたとき」とは、経済的見地において本人の財産状態を評価し、被告人の行為によって、本人の財産の価値が減少したとき又は増加すべかりし価値が増加しなかったときをいうと解すべきであるところ、信用保証協会A支所長の被告人が同協会をして返済能力のないBの債務を保証させたときは、同債務がいまだ不履行の段階に至らず、したがって同協会の財産に、代位弁済による現実の損失がいまだ生じていないとしても、経済的見地においては、同協会の財産的価値は減少したものと評価されるから、同条にいう「本人に財産上の損害を加えたとき」に当たるというべきである。
- 1 【判旨】は、保証債務の負担を「財産上の損害」とし、背任罪を本人の全体財産に対する罪であることを否定している。
- 2 【判旨】によれば、上記信用保証協会による上記保証債務の負担後、Bが偶然金銭を入手して主債務を期限内に弁済した場合に、背任罪の未遂罪の成立を認めることになる。
- 3 【判旨】は、保証債務の負担が「財産上の損害」に当たるか否かを判断するに当たり、主債務者の返済能力を問わないとの判断をしたものである。
- 4 【判旨】は、保証債務の負担をもって「財産上の損害」と認めているから、背任罪が侵害犯であることを否定している。
- 5 【判旨】に対しては、どの程度の財産的価値の減少をもって「損害」というのかが明確ではないという批判が可能である。
正答 5(配点 2)
参考
正解は5。背任罪の「財産上の損害」に関する判例(最決昭和58年5月24日)の判旨を検討する。5:判旨のように経済的見地から財産的価値の減少を「損害」とする立場に対しては、どの程度の価値の減少をもって「損害」というのかが明確でないという批判が可能であるから、正しい。1は判旨は経済的見地から本人の財産状態を評価するもので全体財産に対する罪であることを否定していないから誤り、2は保証債務の負担時に既に損害が生じ既遂となるから後の弁済によって未遂となるわけではなく誤り、3は返済能力のない者の債務を保証した点を捉えており返済能力を問わないとするのは誤り、4は現実の財産的価値の減少を損害とするもので侵害犯であることを否定していないから誤り。
自作の解説(刑法第247条および判例に基づく)
関連条文
関連判例
- 背任罪の財産上の損害(最決昭和58年5月24日刑集37巻4号437頁)
出典 法務省 令和5年司法試験 短答式試験 問題集[刑法]第19問/刑法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00198.html