司法試験 短答式 2023 刑法 第20問

次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No.32]から[No.36])【事例】甲は、高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。)を不正に入手するため、甲が警察官を装いAに電話をかけ、これからA方を訪れる警察官の確認を受けながらカードを封筒に入れ、同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、警察官に成り済ました乙(25歳、男性)がA方を訪れ、隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、カードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。)を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾した。某日午前9時頃、本件計画に基づき、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙は、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた。しかし、乙の態度を不審に思ったAが、乙に身分証の提示を求めたので、乙は、逮捕を免れるとともに本件計画どおりにカードを手に入れるため、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去った。同日午前9時20分頃、乙は、甲に電話で、本件計画どおりカードを入手したと伝えた。同日午前9時30分頃、甲は、丙に電話をかけ、本件計画の内容を初めて説明し、乙からカードを受け取って甲に届けるよう依頼し、丙はこれを承諾した。丙は、同日午前11時頃、乙と合流し、カードを受け取って乙と別れ、自動車でA方から約50キロメートル離れた甲方に向かったが、同日午後0時30分頃、甲方付近で降車した際、制服警察官BからA方での事件とは関係なく職務質問を受けた。その際、丙は、Bを殴り、Bに全治2週間を要する打撲傷を負わせ、その隙に上記自動車で逃走し、同日午後1時頃、甲と合流して甲にカードを届けた。その後、丙の交際相手丁は、丙が上記一連の犯行を行い、警察から捜査されていることを認識しつつ、丙を丁の自宅にかくまった。
  1. 乙がAからカードを奪った行為は、窃盗罪の実行に着手した後、Aに暴行を加えてこれを奪取したことになるから、乙に事後強盗既遂罪が成立する。
  2. 甲が乙のAに対する暴行・脅迫を認識も予見もしていなかった場合、乙がAからカードを奪取した行為について、甲に窃盗未遂罪の共同正犯が成立するにとどまる。
  3. 甲は、当初から丙にカードを運搬させる計画であり、その運搬は重要な役割であるから、丙には盗品等運搬罪ではなく窃盗罪の共同正犯が成立する。
  4. 丙がBを殴って負傷させた行為には、公務執行妨害罪と傷害罪が成立し、これらは観念的競合となる。
  5. 丙のいずれの行為についても、証拠上、犯罪の嫌疑が不十分として不起訴となった場合、丁が丙をかくまった行為について犯人蔵匿罪は成立しない。
  1. 1 正しい
  2. 2 誤っている

正答 2,2,2,1,2(配点 4)

参考

正解はア=2、イ=2、ウ=2、エ=1、オ=2。ア:乙は封筒のすり替えによる窃盗に着手したが財物を得る前に、逮捕を免れるとともにカードを入手する目的でAに暴行を加えて奪取しており、これは財物取得のための暴行であって強盗罪が成立するから、事後強盗既遂罪とするのは誤り。イ:甲は乙の暴行を認識・予見せず窃盗の限度で責任を負うが、乙による財物の奪取という結果が生じている以上、窃盗の共同正犯は既遂となり得るのであって、窃盗未遂罪の共同正犯にとどまるとするのは誤り。ウ:丙は犯行後に初めて計画を説明されてカードの運搬を引き受けたにすぎず、当初から窃盗の共謀に加わったとはいえないから、盗品等運搬罪が成立するのであって窃盗罪の共同正犯とするのは誤り。エ:職務質問中の警察官Bに対する暴行により負傷させた行為には公務執行妨害罪と傷害罪が成立し、両罪は観念的競合となるから正しい。オ:犯人蔵匿罪の「罪を犯した者」には犯罪の嫌疑により捜査中の者も含まれ、嫌疑不十分で不起訴となっても同罪は成立し得るから、成立しないとするのは誤り。

自作の解説(刑法第95条・第103条・第236条・第256条および判例に基づく)

関連条文

出典 法務省 令和5年司法試験 短答式試験 問題集[刑法]第20問/刑法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00198.html