司法試験 短答式 2024 刑法 第12問

学生A、B及びCは、次の【事例】に関して、後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑦までの( )内に後記【語句群】から適切なものを入れた場合、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。なお、①から⑦までの( )内にはそれぞれ異なるものが入る。
【事例】甲は、貨物自動車を運転中、指定最高速度を超過する高速度(ただし、制御困難には至らない速度)で進行した過失により、対向車両を認めてろうばいし、ハンドル操作を誤って自車を道路脇の信号柱に衝突させ、自車助手席のXを死亡させ、更に自車後部荷台に同乗していたYを死亡させたが、同後部荷台にYが乗車している事実を認識していなかった。
【会話】学生A.私は、過失犯の構造に関して(①)に立ち、故意犯の議論を転用すべきと考えます。そして、乙を狙って拳銃を発射したが、その弾が丙に当たった事案の処理について、(②)に立ち、過失犯においても(③)と考え、【事例】において、Yに対する過失犯は成立すると考えます。/学生B.私も(①)に立ちますが、Aさんの言った事案の処理は、Aさんとは異なり、(④)に立ち、過失犯においても(⑤)と考えます。【事例】において、甲がYの存在を認識し得なかったとすれば、Yに対する過失犯は成立しないと考えます。/学生C.私は、過失犯の構造に関しては(⑥)に立ち、(⑦)と考えます。【事例】の事故原因は、指定最高速度を超過する高速度で進行した点にあるところ、甲は、速度超過という危険な状況を認識していたので、指定最高速度内にまで減速するという結果回避措置が義務付けられ、Yの存在を認識していなかったとしても、同義務に違反している以上、Yに対する過失犯は成立すると考えます。
【語句群】a.故意犯と過失犯とを異なる構造の犯罪類型として理解する見解 b.故意犯と過失犯とを並行的に理解する見解 c.行為者の認識した事実と現に発生した事実とが具体的に一致しない限り、故意を阻却するとの見解 d.行為者の認識した事実と現に発生した事実とが構成要件的に一致する限り、故意を阻却しないとの見解 e.特定の人に対する死傷結果について予見可能性が要求される f.「およそ人」に対する死傷結果の予見可能性で足りる g.予見可能性は結果回避義務の前提であり、結果発生の原因となる事実の認識ないし認識可能性があれば、結果回避措置を義務付けてよい
  1. 1 ①a ⑤e
  2. 2 ①b ⑦g
  3. 3 ②d ③e
  4. 4 ③f ⑤g
  5. 5 ④c ⑥b

正答 2(配点 2)

参考

正解は2(①b・⑦g)。学生A・Bは故意犯と過失犯とを並行的に理解する立場(①b)に立つ。学生Aは、認識した事実と発生した事実とが構成要件的に一致する限り故意を阻却しないとする考えを過失に転用し、「およそ人」に対する死傷の予見可能性で足りるとするのに対し、学生Bは具体的な一致を要求する立場から特定の人に対する予見可能性を要求する。これに対し学生Cは、予見可能性は結果回避義務の前提であり、結果発生の原因となる事実の認識ないし認識可能性があれば結果回避措置を義務付けてよいとする立場(⑦g)から、Yの存在を認識していなくても過失犯の成立を認める。

自作の解説(過失犯の構造に関する学説に基づく)

関連条文

出典 法務省 令和6年司法試験 短答式試験 問題集[刑法]第12問/刑法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00241.html