司法試験 短答式 2025 憲法 第9問

次の見解は、生存権の制限に対する司法審査の方法について論じたものである。この見解に関する次のアからウまでの各記述について、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.13]から[No.15]) 「憲法第25条の生存権は抽象的な権利であるが、法律や厚生労働大臣が定めた保護基準によって具体化されれば、その法律・保護基準が憲法第25条と一体をなすことにより憲法上の具体的権利となるから、その不利益変更については、自由権の制限の場合と同様に厳格な審査がなされなければならない。」
  1. この見解によれば、既存の給付水準が憲法第25条の要求する最低限度を満たしていたにすぎない場合には、その引下げは違憲であるが、立法政策によって最低限度から上積みされていたものであった場合には、それを引き下げても立法裁量の範囲内であり違憲とはいえない。
  2. この見解によれば、既存の給付水準が併給禁止規定の新設によって引き下げられた場合、給付規定と併給禁止規定が一体となって新たな給付水準となるから、その新たな給付水準が憲法第25条の要求する最低限度を下回るか否かを審査すれば足りる。
  3. 最高裁判所は、生活保護基準の改定による老齢加算の廃止について、保護基準によって具体化されていた被保護者の期待的利益の喪失を、裁量権の逸脱・濫用を総合判断する際の一要素として考慮するにとどめ、この見解に立脚していない。
  1. 1 正しい
  2. 2 誤っている

正答 2,2,1(配点 3)

参考

正解はア=2、イ=2、ウ=1。この見解は、法律・保護基準で具体化された生存権の不利益変更を、自由権の制限と同様に厳格に審査する立場。ア:誤り。この見解では具体化された給付水準の引下げは厳格審査の対象となるから、最低限度を超える上積み部分の引下げも当然に立法裁量の範囲内になるとはいえない。イ:誤り。この見解は不利益変更それ自体を厳格に審査するものであって、新たな給付水準が最低限度を下回るか否かの審査で足りるとはしない(それは抽象的権利説に近い帰結である)。ウ:正しい。最高裁(老齢加算廃止訴訟、最判平成24年2月28日・同年4月2日)は、保護基準により具体化されていた期待的利益の喪失を厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用の判断における一要素とするにとどめ、この厳格審査の見解には立脚していない。

自作の解説(憲法第25条および参照判例に基づく)

関連条文

関連判例

出典 法務省 令和7年司法試験 短答式試験 問題集[憲法]第9問/憲法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00267.html