司法試験 短答式 2025 刑法 第10問

アからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No.16]から[No.20])
  1. 甲は、Aから現金を喝取しようと考え、Aに対し、「金を出さなかったら殴るぞ。」と申し向けて現金の交付を要求し、これによりAを畏怖させ、Aの上着ポケット内の財布を甲が抜き取ることをAに黙認させた。この場合、Aによる交付行為がないから、甲に恐喝未遂罪が成立するにとどまる。
  2. 甲は、Aによる万引きを目撃したことを奇貨としてAから現金を喝取しようと考え、Aに対し、「万引きしたことを警察に通報されたくなかったら口止め料を払え。」と申し向けて現金の交付を要求し、これによりAを畏怖させ、Aから現金5万円の交付を受けた。この場合、甲が告知した害悪の内容は違法なものではないから、甲に恐喝罪は成立しない。
  3. 甲は、Aから現金を強取しようと考え、Aに対し、社会通念上一般に反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫を加えて現金を要求し、Aから現金5万円を受け取ったが、その際、同脅迫によりAは反抗を抑圧されるに至らなかった。この場合、現実にAが反抗を抑圧されるに至っていないから、甲に強盗未遂罪が成立するにとどまる。
  4. 甲は、警察官を装って盗品を喝取しようと考え、盗品を運搬中のAに対し、「警察の者だが、取調べの必要があるから、それを差し出せ。」と虚偽の事実を申し向けて同盗品の提出を求め、これに応じなければ直ちに警察署へ連行するかもしれない態度を示し、これによりAを畏怖させ、Aから同盗品の交付を受けた。この場合、甲の虚言もAを畏怖させる一材料となるから、甲に恐喝罪が成立する。
  5. 甲は、Aに対する貸金5万円を取り立てるとともに、Aから現金を喝取しようと考え、Aに対し、自己の要求に応じなければAの身体に危害を加える態度を示して同貸金分を含む現金20万円の交付を要求し、これによりAを畏怖させ、Aから現金20万円の交付を受けた。この場合、甲が交付を受けた現金20万円のうち5万円は正当な債権の行使によるものであるから、同貸金額を超える15万円について甲に恐喝罪が成立するにとどまる。
  1. 1 正しい
  2. 2 誤っている

正答 2,2,2,1,2(配点 4)

参考

正解はア=2、イ=2、ウ=2、エ=1、オ=2。ア:畏怖した被害者が財布の抜き取りを黙認することは黙示の交付(処分行為)に当たり恐喝既遂となるから、「恐喝未遂罪にとどまる」とするのは誤り。イ:告知した害悪(警察への通報)自体が違法でなくても、これを手段として金員を要求すれば権利行使の範囲を超え恐喝罪が成立するから、「成立しない」とするのは誤り。ウ:強盗の手段たる脅迫により相手が反抗を抑圧されなくても、その脅迫に基づき財物の交付を受ければ強盗既遂が成立し得るから、「強盗未遂罪にとどまる」とするのは誤り。エ:警察官を装う虚言も被害者を畏怖させる一材料となり、畏怖に基づく交付があれば恐喝罪が成立するから正しい。オ:権利行使であっても社会通念上相当な範囲を超える恐喝的手段による場合は、交付を受けた現金全額(20万円)について恐喝罪が成立するから、「15万円についてのみ」とするのは誤り。

自作の解説(恐喝罪・強盗罪に関する判例に基づく)

関連条文

出典 法務省 令和7年司法試験 短答式試験 問題集[刑法]第10問/刑法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00267.html