弱酸とその塩を混ぜた緩衝液の pH を、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式 pH = pKa + log(塩基 ÷ 酸) で求めます。酸と塩基が同じ量なら pH は pKa に一致します。
緩衝液は、少しぐらい酸や塩基を加えても pH がほとんど動かない溶液です。弱酸とその塩を混ぜて作ります。
ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式といいます。pH を決めているのは 2 つの濃度そのものではなく、その比だけです。
酸を加えると、溶液中の共役塩基がそれを受け取って弱酸に変わります。塩基を加えると、弱酸がそれに水素イオンを渡して共役塩基に変わります。どちらの向きにも受け皿があるわけです。
しかも効いているのは比です。たとえば 1 対 1 の緩衝液に少量の酸を加えて 1.2 対 0.8 になったとしても、比は 0.67 倍にしかなりません。その常用対数はおよそ −0.18 ですから、pH は 0.18 しか動きません。対数が変化を押し潰してくれます。
既定の入力は、pKa 4.76 の酢酸を 0.1 mol/L、その塩である酢酸ナトリウムを 0.2 mol/L 混ぜた場合です。
比は 2 なので、その常用対数はおよそ 0.301 です。pH は でおよそ 5.061 になります。水素イオン濃度はおよそ mol/L です。
酸と塩基を同じ濃度にすると比が 1、その対数は 0 なので、pH はちょうど pKa の 4.76 になります。塩基を 10 倍にすれば pKa より 1 だけ大きい 5.76 です。
比が 1 対 10 から 10 対 1 のあいだ、つまり pKa の前後 1 の範囲でよく働きます。それを超えると片方がほとんど尽きてしまい、受け皿がなくなって pH が急に動きます。
ですから目的の pH に近い pKa を持つ酸を選ぶことが、緩衝液を作るときの第一歩になります。
作るときは式を逆に使います。目的の pH から pKa を引いた値を 10 の指数に乗せれば、必要な比が出ます。pH 5.0 の酢酸緩衝液なら でおよそ 1.74 ですから、酢酸ナトリウムを酢酸の 1.74 倍だけ入れればよいことになります。
式には濃度の比しか出てきません。ですから緩衝液を水で薄めても pH はほとんど変わりません。ただし受け止められる酸や塩基の量、つまり緩衝能は薄めたぶんだけ落ちます。pH が変わらないことと、性能が落ちないことは別です。
血液の pH が 7.4 に保たれているのも、炭酸と炭酸水素イオンによる緩衝のはたらきによるものです。