溶媒だけを通す膜で仕切ると、溶媒は薄いほうから濃いほうへ移ります。それを押し止めるのに必要な圧力が浸透圧です。ファントホッフの式 Π = i C R T で求めます。気体の状態方程式と同じ形をしています。
溶媒だけを通して溶質を通さない膜(半透膜)で、濃さの違う 2 つの液を仕切ると、溶媒は薄いほうから濃いほうへ移っていきます。これを止めるために濃いほうへかけなければならない圧力が浸透圧です。
ファントホッフの式といいます。気体の状態方程式を の形に書き直すと、まったく同じ形をしていることが分かります。溶質の粒子が、気体の分子のようにふるまうと考えられるためです。
既定の入力は、食塩 9 g を 1 L の水に溶かし、体温の 37 ℃ で測った場合です。生理食塩水とほぼ同じ濃さになります。
モル濃度は でおよそ 0.154 mol/L です。食塩は 2 つに分かれるので粒子は 2 倍になります。
浸透圧はおよそ 794 kPa、気圧に直すとおよそ 7.84 atm です。mmHg では 5958 になります。
7.84 気圧というのは相当な圧力です。水深に直すとおよそ 80 m、深さ 80 m の水底にかかる圧力に相当します。これがわずか 0.9 パーセントの食塩水で生じています。
点滴の輸液が 0.9 パーセントの食塩水に決められているのは、この浸透圧を血液と合わせるためです。ずれると赤血球が水を吸って破れたり、逆に水を奪われてしぼんだりします。
海水を真水に変える逆浸透膜が高い圧力を必要とするのも同じ理由です。浸透圧に逆らって水を押し戻すので、それ以上の圧力をかけなければなりません。
計算値の 7.84 atm に対して、血液の実際の浸透圧はおよそ 7.6 atm です。食塩が水中で完全に 2 つに分かれるわけではなく、実際の は 1.86 ほどになるためです。粒子の数に 2 ではなく 1.86 を入れれば、より実測に近づきます。
薄い溶液での近似式です。濃くなるとずれが大きくなります。
温度は絶対温度で効きます。この式では摂氏で入力を受け取り、中でケルビンに直しています。
ナメクジに塩をかけると縮むのは、体の外が高い濃度になって水が吸い出されるためです。漬物や塩漬けの魚が傷みにくいのも同じで、細菌が水を奪われて生きられなくなります。
植物が根から水を吸い上げ、高い木の先まで届けられるのも浸透圧の助けによるものです。
溶液を比べるときの言い方も覚えておくと便利です。血液と同じ浸透圧なら等張、高ければ高張、低ければ低張といいます。低張の液に赤血球を入れると水が入って破れ、高張の液に入れると水を奪われてしぼみます。点滴で浸透圧を合わせるのは、このどちらも起こさないためです。