実際に取れた量が、計算上の最大量に対して何 % だったかを求めます。あわせて、同じ収率の工程をくり返したときの通算収率も出します。1 段では悪くない収率でも、重ねると急に落ちます。
化学反応で実際に取れる量は、計算上の最大量より必ず少なくなります。その割合が収率です。
理論収量は反応式の係数から出します。この電卓の「反応の量的関係」で求められます。
理由はいくつも重なります。目的の反応以外の副反応が起きて別のものができる、反応が最後まで進まず原料が残る、精製のときにろ紙や器具に付いて失われる、再結晶で母液のほうへ溶けたまま残る。どれも避けきれません。
既定の入力は、理論収量 50 g に対して実際に 38.5 g 取れた場合です。
収率は で 77 パーセント、失われた量は 11.5 g になります。1 段階の反応としては悪くない数字です。
ここからが要点です。収率は掛け算で効きます。同じ 77 パーセントの工程を 2 回通せば で 59.29 パーセント、3 回なら 45.65 パーセントです。3 段階でもう半分を切ります。
もっと良い収率でも同じことが起こります。各段階 90 パーセントという優秀な反応でも、10 段階つなげば でおよそ 34.9 パーセントにしかなりません。
天然物の全合成が難しいと言われるのはこのためです。段階数を 1 つ減らすことが、1 段階の収率を大きく上げることと同じくらい効きます。合成の設計で経路の短さが重んじられる理由がここにあります。
収率が 100 パーセントを超えたら、答えが正しいのではなく測り方を疑ってください。不純物が混じっている、乾燥が足りず溶媒が残っている、秤量を間違えている、のいずれかです。物質が湧いて出ることはありません。
理論収量の出し方を間違えると、収率も丸ごと間違えます。反応式の係数がそろっているか、限定反応物を取り違えていないかを先に確かめてください。
収率は「狙ったものがどれだけ取れたか」しか見ていません。原料のうちどれだけが製品の一部になったかは別の話です。
たとえば大きな保護基を付けて反応させ、あとで外すという経路では、その保護基は最後に捨てられます。収率が 95 パーセントでも、投入した原子の多くは廃棄物になっています。この観点を数にしたものを原子効率(アトムエコノミー)といい、製品のモル質量を全反応物のモル質量の和で割って求めます。
環境負荷を考えるようになってから重んじられるようになった指標です。収率と原子効率は別々に見る必要があります。