司法試験 短答式 2023 憲法 第9問

人身の自由に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.17]から[No.19])
  1. 憲法第34条前段の弁護人依頼権の規定は、単に被疑者が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというにとどまるものではなく、弁護人から援助を受ける機会を実質的に保障しているものと解すべきであり、刑事訴訟法第39条第1項の接見交通権は、憲法第34条の趣旨にのっとり設けられたものである。
  2. 憲法第35条の下で令状なく住居に侵入し捜索・押収ができるのは、裁判官が発した令状による逮捕の場合、現行犯逮捕の場合及び緊急逮捕の場合に限られ、現行犯として逮捕する要件は備わっていたが、現実には逮捕しない場合は含まれない。
  3. 交通事故を起こした運転者は、警察官に対し、交通事故発生の日時、場所、死傷者の数などを報告する義務を負うが、道路における危険とこれによる被害の増大を防止し、交通の安全を図るという目的のためには、刑事責任を負うことにつながるような自己に不利益な供述をさせることもやむを得ないから、この報告義務を定めた法律は、憲法第38条第1項に違反しない。
  1. 1 正しい
  2. 2 誤っている

正答 1,2,2(配点 3)

参考

正解はア=1、イ=2、ウ=2。ア:接見交通権が争われた事件(最大判平成11年3月24日民集53巻3号514頁)は、憲法34条前段の弁護人依頼権は単に選任の妨害禁止にとどまらず弁護人から援助を受ける機会を実質的に保障する趣旨であり、刑事訴訟法39条1項の接見交通権はその趣旨にのっとり設けられたものとした。記述は判例に合致する(正しい)。イ:判例(最大判昭和30年4月27日刑集9巻5号924頁)の趣旨によれば、現行犯逮捕の要件が備わっている場合には、現実に逮捕しなくても令状なく捜索・押収をなし得る場合がある。これを含まれないとする記述は判例に反し誤り(誤っている)。ウ:交通事故報告義務事件(最大判昭和37年5月2日刑集16巻5号495頁)は、報告を要求される事項が事故の態様等に限られ刑事責任を問われるおそれのある事項の供述までは強制されないから憲法38条1項に違反しないとしたのであって、刑事責任につながる不利益供述をさせてもやむを得ないとしたのではない。理由付けを異にする記述は誤り(誤っている)。

自作の解説(憲法第34条・第35条・第38条および最高裁判例に基づく)

関連条文

関連判例

出典 法務省 令和5年司法試験 短答式試験 問題集[憲法]第9問/憲法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00198.html