DNAの断片はPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によって大量に作られる。PCRは、微量のDNAから調査したい特定の領域を大量に複製する技術である。PCRでは温度を調節して反応を変える。
必要なもの
注 当記事は高校生物の解説記事であり、医学的な専門性はない。
・増やしたいDNA断片
・プライマー
・DNAポリメラーゼ
手順
次の三つを一サイクルとする。
- DNAを加熱して2本鎖をほどく(約90℃)
- プライマーをDNAにつける(約50℃)
- DNAポリメラーゼがDNAを合成する(約70℃)
ここで「プライマー」は増幅したい領域に相補的なものを使う。最初に用いるDNAは増幅したい領域を含む「おおざっぱなもの」であり、それをそのままコピーすると粗いDNAばかりが作られる。
DNAポリメラーゼの合成はプライマーの結合部位から始まるため、サイクルを重ねるごとに特定の領域のみを含むDNA断片の密度を上がっていく。
以下、それぞれの手順の詳細。
2本鎖をほどく
DNAをほどくには、94℃まで加熱する。このレベルの温度では多くのタンパク質は失活する。失活とは、タンパク質の構造が変わり、本来の機能が失われること。
温度を冷やす&アニーリング
90℃から50℃ほど(プライマーと実験環境によって細かい温度は異なる)まで冷やすと、DNAの鎖が再び結合しようとする。このときにプライマーがあると、もとの2本鎖よりも優先されてプライマーとDNAの結合が促進される。
反応の優先度
プライマー+DNA > DNA+DNA
プライマーをDNAにつけることをアニーリングという。プライマーはもとのDNAの鎖のそれぞれに(相補的に)つく。
温度を上げる&DNA合成
72℃まで上げると、DNAポリメラーゼによるDNA合成が始まる。DNAポリメラーゼは酵素であり、タンパク質である。タンパク質は高温に弱いため、PCRで用いるDNAポリメラーゼは耐熱性DNAポリメラーゼである。
ウィルスのPCR
ウィルスの遺伝子を調べるときもPCRを用いるが、インフルエンザウィルスなどはDNAではなくRNAであり、PCRはDNAの複製技術である。
ウィルスのRNAを調べるときは、逆転写酵素でウィルスのRNAに相補的なDNAを作り、そのDNAをPCRで増幅する。