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作用反作用とつり合いはどこが別か|力が働く相手を見る

物体 A が物体 B に力を及ぼすとき、B もまた A に力を及ぼします。この つの力は大きさが等しく、向きが逆になる。

これを作用反作用の法則といいます。ニュートンが『プリンキピア』(1687 年)に第 3 の法則として置いたものです。

一方だけが力を出すという状況は起こりません。力はかならず対で現れる。

法則が要求する 4 つの条件

つの力は大きさが等しい。
向きは正反対になる。
同じ直線の上に乗っている。
同時に現れ、同時に消える。

片方が先に働いて、あとから反作用が返ってくるわけではありません。押した瞬間に押し返されている。

2 つの力は別々の物体に働く

作用と反作用は、同じ物体に働くのではありません。

友だちの背中に乗った場面で考える。あなたが背中を下向きに押す力は、友だちに働く。友だちがあなたを上向きに押し返す力は、あなたに働く。

働く相手が違うので、この つは足し算の対象になりません。別々の物体の運動方程式に、別々に入っていく。

同じ物体に働く逆向きの力とは、ここが決定的に違う。

例:机の上に置いた本

本には重力が下向きに働き、机からの垂直抗力が上向きに働く。大きさは等しく、向きは逆。

この つを作用反作用の対だと考えると誤りです。どちらも本という同じ物体に働いているので、条件を満たさない。

机が押し返している力は、へこみが目に見えないぶん気づきにくいところがあります[1]

正しい対は次のように組みます。

重力の相手

地球が本を引く力の反作用は、本が地球を引く力。地球に働くので、本の運動方程式には出てこない

垂直抗力の相手

机が本を押す力の反作用は、本が机を押す力。机に働くので、こちらも本の運動方程式には出てこない

見分け方は一つです。「A が B を押す」の つの名詞を入れ替えて「B が A を押す」にすれば、それが反作用にあたる。

つり合いとの違い

同じ物体に働く逆向きの力が釣り合っている状態を、力のつり合いといいます。作用反作用とは別の話。

机の上の本が静止しているのは、本に働く重力と垂直抗力がつり合っているからです。この つはたまたま同じ大きさですが、机が壊れれば垂直抗力は消える。作用反作用の対はどんな場合でも等しいので、性質がまったく違います。

同一の物体に働く複数の力の合力が になっている状態。力の数はいくつでもよく、 つとは限らない。

つり合いは物体が つ、作用反作用は物体が つ。この違いを押さえておくと、力の図を描くときに迷わなくなります。

打ち消し合わない理由

作用と反作用が打ち消し合うなら、何も動き出さないはずです。それでも物は動く。

理由は前節のとおりで、 つの力が別の物体に働くからです。力が打ち消し合うのは、同じ物体に働く場合だけ。

あなたが友だちを押した力は友だちを加速させ、友だちがあなたを押し返した力はあなたを加速させる。それぞれの物体で別々に効いている。

例:自由落下でも成り立つ

橋から飛び降りたとき、あなたは何に力を及ぼしているのか。相手は地球です。

地球があなたを引く力の反作用は、あなたが地球を引く力になる。大きさは同じで、向きは上向き。

地球もこの力を受けて、あなたのほうへ加速しています。ただし地球の質量が桁違いに大きいため、その加速度は測れないほど小さい。

支えるものがないから作用反作用が働かない、とはなりません。重力は接触していなくても働く力で、地球という相手がつねに存在する。

加速度が違うのは質量が違うから

同じ大きさの力を受けても、結果は同じになりません。運動方程式 が示すとおり、加速度は質量に反比例する。

軽いほうが大きく動きます。それを見て「軽いほうが大きな力を受けた」と考えると外す。

力の大きさと、その力が引き起こす効果は別の量です。効果の大きさから力の大きさを読みとろうとすると、この法則を見失う[2]

例:氷の上で押し合う

のスケーターが向かい合い、互いに押し合いました。押す力は 、押している時間は とする。

受ける力積はどちらも です。向きだけが逆になる。

軽いほうが速く動き出す。速さの比は質量の逆比になり、 に対して

片方だけが押した場合でも結果は変わりません。押される側も同じ大きさで押し返すので、 人とも動き出す。

歩く、泳ぐ、飛ぶ

前へ進む動作は、どれも作用反作用を使っている。

歩く

足で地面を後ろへ押す。その反作用として地面が足を前へ押し返し、体が前進する

泳ぐ

手で水を後ろへ押す。水が手を前へ押し返し、体が進む

ロケット

燃焼ガスを後ろへ吹き出す。ガスがロケットを前へ押し返し、空気のない宇宙でも加速できる

つるつるの氷の上で歩けない理由も、地面を後ろへ押せないことにある。押せなければ押し返してももらえない。

ロケットが真空で進めるのも同じ理屈になる。押す相手は外の空気ではなく、自分が吐き出したガスそのものです。

運動量保存則とのつながり

作用反作用の法則から、運動量保存則が導けます。 つの物体が及ぼし合う力を とする。

同じ時間 だけ働くので、それぞれの運動量の変化は次のようになる。

足すと です。合計の運動量は変わらない。

系の中で働く力は必ず対で現れるため、合計には効きません。外から力が加わらない限り、全体の運動量は保たれる。

例:壁を押す

壁を手で押しても、壁は動きません。それでも壁はあなたを同じ大きさで押し返している。

動かないのは力を受けていないからではない。壁が床や地面と一体になっていて、全体の質量が大きすぎるためです。

氷の上に立って壁を押すと、今度はあなたのほうが後ろへ動きます。押し返す力は変わっていないのに、結果だけが変わる。

効いているのは、あなたの足と床のあいだの摩擦。摩擦がなければ、反作用がそのまま加速に使われる。

馬と荷車のパラドックス

馬が荷車を引くと、荷車も同じ大きさで馬を引き返します。ならば つは打ち消し合い、荷車は永久に動かないのではないか。

この問いは、 つの力を同じ物体に働くものと見たときにだけ生まれます。実際には片方が荷車に、もう片方が馬に働く。

荷車の運動方程式に入るのは、馬が荷車を引く力だけです。ほかに大きな力がなければ、荷車はその力で前へ加速する。

馬のほうには、荷車から引き返される力と、地面から受ける反作用の つが働きます。地面を蹴る力のほうが大きければ、馬も前へ進む。

力の図を描く順序

作用反作用の混乱は、力の図を描く手順を決めておくと起きにくくなります。

着目する物体を つだけ選ぶ。
その物体に働く力だけを矢印で描く。
ほかの物体に働く力は、いっさい描かない。
描いた力の合計から運動方程式を立てる。

反作用は相手の物体に働くので、着目した物体の図には出てきません。図に出ないことが、そのまま打ち消し合わないという結論になる。

綱引きで勝負がつく理由

綱を通して両チームが引き合う力は、同じ大きさです。作用反作用の法則がそう決めている。

同じ力なら勝敗がつかないように見える。実際に効いているのは、綱ではなく足と地面のあいだの力。

地面をより強く後ろへ押せたチームが、より大きな反作用を地面から受ける。靴の摩擦と体重が効くのはそのためで、綱を引く力の差で決まるわけではない。

静止した机の上に本が置かれています。本に働く重力の反作用はどれですか。

  • 机が本を押す垂直抗力
  • 本が地球を引く万有引力
  • 本が机を押す力
  • 本に働く摩擦力
__RESULT__

反作用は、作用の つの名詞を入れ替えたものです。作用が「地球が本を引く」なら、反作用は「本が地球を引く」になります。垂直抗力は本に働く別の力で、その反作用は「本が机を押す力」です。

接触しない力でも成り立つ

作用反作用は、触れ合っている場合に限りません。重力や電気の力のように離れて働く力でも、対で現れる。

地球と月は互いに引き合っています。地球が月を引く力と、月が地球を引く力は同じ大きさ。

質量が違うので加速度は違うものの、力そのものは等しい。地球も月に引かれて、 天体の共通の重心のまわりをわずかに回っている。

正と負の電荷のあいだでも同じことが起きる。引き合う力の大きさは、どちらから見ても変わらない。

参考

3. Gesetz von Newton: Actio gegengleich reactio. Lehrstuhl für Didaktik der Physik, LMU München.
Keith S. Taber. *Newton's third law*. Science-Education-Research.
物体 A が B を押すとき、B も同じ大きさで A を押し返します。この $2$ つは別々の物体に働くので、足し算の対象になりません。机の上の本にはたらく重力と垂直抗力はどちらも本に働くため、つり合いであって作用反作用の対ではない。$60\ \mathrm{kg}$ と $40\ \mathrm{kg}$ のスケーターが $120\ \mathrm{N}$ で押し合うと、力は同じでも動き出す速さは $1.0\ \mathrm{m/s}$ と $1.5\ \mathrm{m/s}$ に分かれます。綱引きの勝敗を決めているのは足と地面のあいだの力で、綱を引く力の差ではない。運動量保存則がここから導けるところまで扱いました。