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相対性理論と光速度不変|ChatGPT の答えを確かめる

ChatGPT に相対性理論をきいたやりとりを、あとから 1 つずつ確かめました。おおむね合っている答えの中に、はっきり誤ったものが混じっています。

相対性理論とはなんですか?

返ってきたのは、光の速さが一定であることを前提にした特殊相対性理論と、重力を含めた一般相対性理論の 2 つがある、という答えでした。ここまでは教科書どおりです。

ただし「前提」という言葉が効いています。光の速さが一定であることは、証明された結論ではなく、出発点として置いた約束のほうです。

光の速さはだれが測っても同じ

光速度不変は証明できますか?

「マクスウェルの電磁気学の方程式から導かれることが証明されています」と返ってきました。ここは半分だけ合っています。

マクスウェルの方程式から、真空中を伝わる電磁波の速さが決まるのは本当です。真空の誘電率 と透磁率 から計算できます。

電気の実験と磁気の実験だけから求めた 2 つの定数を組み合わせると、光の速さが出てきます。マクスウェルがこれを見つけたとき、光が電磁波だと分かりました。

ただし方程式が言うのは「電磁波はこの速さで進む」までです。「走っている人が測っても同じ値になる」ことまでは言っていません。

音なら、風に乗れば速く聞こえます。光もそうなるはずだ、と考えるほうが自然でした。実験がそうならなかったので、アインシュタインは、どの慣性系で測っても になることのほうを原理として置いた。

動いている時計は遅れて見える

光速度の半分で動くロケットでは、何が変わりますか?

時間の進み方が変わります。速さ で動く時計は、止まっている側から見ると次の割合で遅れる。

なら です。ロケットの中で 秒たつあいだに、外では 秒たつ。

空から降ってくる粒子で確かめられる

この遅れは計算の上の話ではなく、実際に測られています。ミュー粒子という、宇宙線が大気とぶつかってできる粒子を使う実験がありました[1]

ミュー粒子は止まった状態で平均 ほどで壊れます。半減期に直すとおよそ

ワシントン山の山頂で 1 時間に 個を数え、 下の海面で数え直しました。落ちてくるのにかかる時間は です。

時間の遅れがないとすると、 なので、半減期 回ぶん。

個しか残らない計算になります。ところが実際に数えられたのは 個でした[1]

ミュー粒子の速さは光速の 倍ほどで、 はおよそ です。ミュー粒子自身の時計では しかたっていない。

実測の 個に近い値になりました。数え方を変えたのではなく、粒子の側の時計が遅れていた、と読むほうが観測に合います。

「質量が増える」という言い方

光速度の半分で動くロケットは、もとの何倍の質量ですか?

「約 倍」と返ってきました。数値は そのもので、計算は合っています。

ただし、この 倍を質量と呼ぶかどうかは、書き手によって分かれます。 を相対論的質量と呼んで使う流儀と、質量は ひとつだけにして はエネルギーと運動量の側につける流儀がある[2][3]

日本の高校の教科書は後者に寄っています。物体の質量そのものは速さで変わらず、増えるのはエネルギーのほう、という書き方です。

相対論的質量を使う流儀

を質量と呼ぶ。 と書ける

質量をひとつに保つ流儀

質量は のまま。速さの効果は と運動量 の側に入れる

どちらで書いても実験の予測は変わりません。呼び名の約束が違うだけです。

光子は質量 0 でもエネルギーを持つ

ここが、はっきり誤っていた箇所です。

光子は質量がないと言いましたね。ということは から、光子のエネルギーは 0 になりませんか?

返ってきたのは「 であるため、 となることがあります」でした。これは誤りです。光子のエネルギーは ではありません。

は、止まっている物体だけに当てはまる式です。動いているものまで含めた形は、運動量 を足した次の関係になります。

3 つの量が、直角三角形の 3 辺の関係で結ばれています。斜辺が 、2 辺が

光子では だから、縦の辺がつぶれて三角形が横に倒れます。残るのは で、 にはならない。

止まっている物体では逆に になり、横の辺がつぶれて が残ります。有名なこの式は、三角形が縦につぶれた場合にあたる。

光子のエネルギーは振動数から決まります。

はプランク定数です。振動数が高いほどエネルギーが大きく、紫外線が日焼けを起こして赤外線が起こさないのは、この差によります。

E の 2 乗は pc の 2 乗と mc の 2 乗の和

止まっていれば p = 0 で E = mc の 2 乗

光子は m = 0 で E = pc

電磁気からここへつながる

この記事を電磁気の並びに置いているのは、出発点が電磁気だからです。

電気の実験から が決まり、磁気の実験から が決まる。その 2 つを組み合わせると光の速さが出て、その速さがだれから見ても同じだという要請から、時間の遅れが導かれます。

コンデンサーの容量に出てくる と、コイルの磁界に出てくる が、時間の進み方の話までつながっている。

光子について正しいものはどれですか。

  • 質量が なので、エネルギーも になる
  • 質量は だが、 でエネルギーを持つ
  • 光速で動くので、質量が無限大になる
__RESULT__

は止まっている物体にあてはまる式です。動いているものまで含めた とすると が残ります。無限大という答えは、相対論的質量の式に を入れたもので、光子には当てはめられません。

になるのは、速さがおよそいくつのときですか。

__RESULT__

とおくと で、 です。 では にしかならず、 では まで上がります。

きいた答えのうち、光の速さの話と の値は合っていました。誤っていたのは、止まっている物体だけの式を動いている光子にあてはめた 1 か所です。式には、それが成り立つ範囲がいっしょについてきます。

参考

David H Frisch, James H Smith. Measurement of the Relativistic Time Dilation Using μ-Mesons, 1963. 講義資料としての要約, University of New Mexico Physics 330.
Lev B Okun. *The Concept of Mass and the Formula E = mc2*, CERN.
John Baez ほか. *Does mass change with velocity?*, University of California, Riverside.
光の速さが $1/\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}$ で決まるところまでは合っています。ただし「どの慣性系から測っても同じ」ことは方程式から出る結論ではなく、置かれた原理のほう。$\gamma=1/\sqrt{1-v^2/c^2}$ の値も正しく、$0.5c$ なら $1.15$ 倍になる。はっきり誤っていたのは、$E=mc^2$ を光子にあてはめてエネルギーを $0$ とした答えです。この式は止まっている物体のもので、$E^2=(pc)^2+(mc^2)^2$ という直角三角形の、縦の辺がつぶれた場合にあたります。ワシントン山で数えたミュー粒子が時間の遅れの実測になっている話、質量の呼び方が流儀で分かれる話まで。