整数全体の個数を T とした場合、偶数全体は何個あるでしょうか?
任意の偶数 2n に対して整数 n が存在するため、偶数全体と整数全体は一対一対応します。正確に言うと、偶数全体の集合 M から整数全体の集合 N への射 f
f: M -> N
f(2n) = n
は全単射です。これらをふまえると、偶数全体の個数は T と思われます。
整数全体の個数 T
偶数全体の個数 T
でも、整数には偶数と奇数があり、偶数と同じ分だけ奇数があるような気がします。実際、奇数全体の集合を L とすると、M から L への射
g: M -> L
g(2n) = 2n + 1
は全単射です。そこで奇数全体の個数を T とします。整数全体、偶数全体、そして奇数全体の個数は T だから
T = T + T
という式がなりたちますが、これは矛盾しています。
今回とりあげた矛盾は、私が小学生くらいのときにぼんやり感じていた謎で、大学に入るまでふわふわしていた問題です。
この矛盾の本質は「整数全体の個数」を定義することそのものにあります。無限集合には個数という概念はなく、代わりに濃度というものが定義される場合があります。濃度の話を始めると長くなるため、今回はこれで終わり。
結論:
無限個という概念を使うと、通常の「個数」に適応される演算(足し算など)は矛盾する。無限集合には「個数」でなく「濃度」を使う。