私は共産主義者でもフェミニストでも環境保護主義者でもありません。しかし私は現代貨幣理論の妥当性を信用しています。
現代貨幣理論の中核をなす信用創造論はきわめて重要です。この理論では、銀行が私たちに金を貸したときに金は生まれます。私たちが金を返すと金は消えます。国の豊かさは、家計、企業、そして国の借金額で決まります。
信用創造論は理論というより、銀行、中央銀行、財務省の実務そのままです。中央銀行が通貨発行権をもっている国(日本やアメリカ)では、中央銀行はある条件が成立する限り無制限に国債を購入できます。条件とは物価の安定です。
日本の失われた三十年(平成〜現代まで)をざっくり考える
現代貨幣理論から考えると、日本の大不況が続いた原因は
- 80 年代に株と不動産のバブルを適切に規制しなかったこと
- 総量規制
- 白川日本銀行総裁によるタカ派的政策
- 企業が金を返済し続けたこと
です。非常にざっくり言うと、日本銀行が日本から金を吸いつづけたことで、私たちの富は減った。富は貸出しから生まれるはずなのに、企業はずっと借金を減らす努力をつづけた。
借金と富は表裏一体である…という信用創造論を知らない会社は自己資本比率を上げていく。日本の自己資本利益率が悪い傾向はここから生まれた、かもしれない。
日本銀行が国債を買わないかぎり、日本に明るい未来はない、かも
日本政府がつくる借金は、最終的に日本銀行の負債に計上される。日本銀行のバランスシートには資産に国債、負債に日本銀行券と「当座預金」がある。
一番大きな負債項目は「日本銀行当座預金」です。これは民間の銀行が日本銀行に預けている決済用の預金です。
国債が〜、日本の借金が〜と言う前に、私たちはこの日本銀行当座預金について正確に理解する必要があります。この部分は国会で討論されています。第208回国会・参議院財政金融委員会から重要な証言を引用します。
こちらも銀行実務に即して申し上げますと、銀行は、国債の金利や償還までの期間といった条件が自らの投資目線に見合うものと判断すれば、国債を購入いたします。その後、政府が国債発行により調達した資金を実際に使いますと、その資金は家計や企業の預金口座に流入し、預金がそれだけ増加いたします。このように、銀行の国債購入分だけ民間の預金が増えているという意味で、貸出しの場合と同様、信用創造が行われているということになります。
清水誠一日本銀行企画局長(第208回国会・参議院財政金融委員会)そして、二番目の財政出動。ここは、政府側は財政支出を何かしますと、そのことによって政府預金が出るわけですね、日銀当座預金、政府預金がその分出ていくと。そして民間側は、例えば財政出動したそれを、工事を例えば民間事業所が公共事業で受けたとしましょう。その場合は、民間の方で自分の銀行預金が増えて売上げというものが立つと、こういうことなんですね。そして、この銀行、民間銀行はどうなるかというと、民間銀行に預金が増えますから、預金が増えた分だけ銀行側は日銀当座預金、準備預金が増えると、こういう仕訳になるわけです。
西田昌司議員(第208回国会・参議院財政金融委員会)
日本銀行の当座預金とは、国債購入による産物です。
- 日本銀行が国債を買う
- 日本政府は日本銀行から金をもらう
- 日本政府はその金を社会に供給(インフラ整備など)
- その金を企業や家計が受けとり、銀行に預ける
- その銀行の日本銀行当座預金が増える
つまり日本銀行が国債を買えば買うほど、日本政府の財政出動を通して、日本社会に金が供給される。
だから、日本銀行が日本政府に金を貸しつける行為(国債購入)は、民間の信用創造と同様。これは日本銀行の局長が認めた事実です。信用創造とは、私たちの富をつくることをいいます。しつこいですが、もう一度言います。
日本銀行は「政府の赤字国債を購入することで、日本の富をつくっている」ことを認めました。
私たちの富が増えるには、日本政府が借金し、その借金を日本銀行が買う必要があります。現代貨幣理論が財政出動を重視する姿勢をとる理由がだんだんわかってきます
日本銀行の当座預金が増えていくこと、または財政出動をリスクと思うなら、企業または家計が借金する必要があります。アメリカがなぜ成長してきたか? それは家計がクレジットカードを使いまくって借金を大きくしたからです。
アメリカでは家計の債務残高が問題になっています。クレジット残高、学資ローン残高が年々増えているアメリカ。でも、個人の債務が増えたからこそ、アメリカは豊かになったとも言えます。
細かい話をするとキリがありませんが、借金しなくても国が豊かになる方法があります。それはサウジアラビアのように資源を売って外国から富をもらうことです。しかしそれはほとんどの先進国で期待できない話です。私たちは基本的に借金を重ねていく以外に方法はありません。
借金が富をつくるという前提がある以上、誰が借金を背負うかという問題にいきつきます。アメリカでは個人がその役目を負いました。日本は日本政府と中央銀行が負いました。
財政出動と国債購入は、日本が富をつくっていくうえで不可欠なツールになってしまったのです。