いわゆる「いろはにほへと」はいろは歌と呼ばれる歌の出だしであり、いろは歌は四十七文字(七、五、六、五、七、五、七、五)からできている。この七、五、七、五…と続くリズム(形式)を今様(いまよう)という。ただしいろは歌は二段落のみ六、五となっている。
いろはにほへと
ちりぬるを
わかよたれそ
つねならむ
うゐのおくやま
けふこえて
あさきゆめみし
ゑひもせす
漢字にすると以下のようになる。
色はにほへど
散りぬるを
我が世たれぞ
常ならむ
有為の奥山
今日越えて
浅き夢見じ
酔ひもせず
いろは歌の作者は不明であるが、平安中期には存在していたと考えられている。
大和和紀氏の源氏物語を舞台とした漫画「あさきゆめみし」はいろは歌の最終段階が由来である。ここでひらがなは「あさきゆめみし」だが、漢字にすると「浅き夢見じ」と「し」が濁音になっていることに注意。「じ」は打ち消しを意味し、「あさきゆめみし」は「浅き夢は見ない」と訳されるが、いろは歌の中盤「我が世誰ぞ常ならむ有為の奥山今日越えて」の仏教的な悟りを漂わせる文とうまく合わない。
そのため「あさきゆめみし」を「浅き夢見し」(浅き夢を見ていた)と訳す場合もある。このように訳すと中盤の文とうまくつながる。しかし「浅き夢見し」という文は平安中期の文法上成り立たないことがわかっている。
「いろは」の意味
「いろは」は日本語の文字を網羅したいろは歌の最初の三文字であるため、転じて「初歩」「初級」を意味するようになった。
例えば「算数のいろは」は算数の初歩、例えば足し算や引き算の勉強を意味する。「~のいろは」と使われることが多い。