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弧と弦はどこで見分けがつかなくなる?三角関数の極限 sin x / x = 1

のとき なら です。 に近づけると に向かいます。

を代入すると で、値が決まりません。近づけた先だけが決まる、という形の等式です。

角はラジアンで測ります。度で測ると答えが変わる。理由はあとで見ます。

弧の長さと弦の長さ

半径 の円で、中心角 ラジアンの弧の長さは です。一方、その角に対する 座標が

角を小さくすると、弧はまっすぐに近づきます。曲がった長さ と、まっすぐな長さ の比が に寄る[2]

これを面積の大小で確かめます。単位円上に をとります[3]

三角形 の面積は 、扇形 、三角形 です。

内側から外側へ入れ子になっているので、この順に大きくなります[3]

はさみうちの形に直す

各辺を 倍し、 では なので で割ります。

逆数をとると不等号の向きが変わり、目的の形になる[1]

左端は 、右端は定数の 。両側が同じ値に向かうので、あいだの です。

負の側も同じ値になります。 で、符号が 2 つとも消えるためです。

左右の極限が一致するので、 の極限として が確定します。

ラジアンでなければ成り立たない

を度で測ると、この極限は になりません。 なので、比は です。

行き先は 。弧の長さが になるのはラジアンで測ったときだけなので、当然といえば当然です[2]

度で測ると導関数にも が居座り、 になります。

余計な定数を出さないための約束がラジアンです。 を対数の底に選ぶのと同じ理由。

例:

角の中身が なので、分母もそろえます。

と置けば で、。角の係数がそのまま答えになります。

例:

分子と分母をそれぞれ で割る形に持ちこみます。

角の係数の比が残る。 どうしの比は、中身の比に落ちます。

例:

と分けます。

なので効きません。 の近くでは と同じ振る舞いをします。

例:

分子と分母に を掛け、 を作ります。

。数値でも に寄っています。

半角の公式 を使う道もあります。

有理化で進む

を掛けて を作る。根号の有理化と同じ手つき

半角で進む

に直す。角が半分になるぶん、係数の が先に出る

例:分母が のとき

に向かいます。上の結果に を掛けるだけ。

分母の次数が 1 つ下がると答えが になる。この差が の導関数が原点で になることに対応します[2]

例: のとき

を求めます。近づく先が でないので、置きかえます。

とすると で、

以外へ近づく問題は、まず へ寄せる置きかえを探します。

例: のとき

です。 のあいだで揺れ続けるので、分母だけが伸びる。

両端が に向かうので、はさみうちで に決まります[1]。同じ式でも近づく先が違えば答えも違う。

に値 を割り当てて全域で定義した関数は sinc と呼ばれます。 という値を持つ関数です[4]

一次の近似として見る

は、 の近くで とほぼ等しいという意味です。

原点のまわりを拡大していくと、 の曲線と直線 の区別がつかなくなります。

のほうは とほぼ等しい。次数が 1 つ上がるので、近づき方はもっと平らです。

に近い。差は の程度。
に近い。こちらは より少し大きい。
に近い。 の 1 次では に見える。

導関数がここから出る

の導関数を定義から出します。加法定理で を開くところから始めます[2]

前の括弧が 、後ろが に向かいます。残るのは だけ。

についても同じ手順で が出ます[2]。三角関数の微分は、この 2 つの極限だけで成り立っています。

例:微分の値として読む

は、 における微分係数そのものです。

なので値は 。ただしこの読み方で証明にはできません。

を導くのに を使っているので、循環します。

面積で挟む議論は、扇形の面積が であることを前提にしています。

角を弧の長さで定義しておけば、この前提は定義から直に出る。ドイツ語の教科書ではその順序で組まれている。

例:3 次まで見る

を求めます。 の差は の 1 次では消えます。

分母の に分けて配ります。

のほうがわずかに大きいので、差は負になります。

よくある誤り

角を度のまま計算する。公式はラジアンでしか成り立ちません。
の分母を のままにする。 にそろえてから係数を出します。
以外の問題で公式を直に当てる。まず へ寄せる置きかえを探します。
と答える。分子も分母も 次なので、比は に残ります。
と答える。こちらは です。
を負の でも使う。不等式は の範囲で立てたものです。

はいくつですか。

__RESULT__

に直すと、比は です。 は分子と分母を入れかえた値、 は係数を無視した値になります。

分母の次数が変わると答えも変わります。

はいくつですか。

__RESULT__

なので です。 は角の 倍を落とした値、 は係数を割ってしまった値になります。

弧と弦の長さが の近くで見分けられなくなる。この一点から、三角関数の微分が全部出てきます。

参考文献

*The Limit Laws*. Calculus Volume 1, OpenStax.
Gilbert Strang. *Derivative of the Sine and Cosine*. Highlights of Calculus, MIT OpenCourseWare.
Oliver Deiser. *Ableitung von Kosinus und Sinus*. Einführung in die Mathematik 1.1.
Sinc Function. Wolfram MathWorld.
$x = 0.01$ で $0.9999833$、$x = 0.001$ で $0.99999983$。単位円に三角形と扇形と三角形を並べて面積を比べると $\cos x \leq \frac{\sin x}{x} \leq 1$ が出て、両側が $1$ へ寄ります。度で測れば行き先は $\frac{\pi}{180}$ に変わる。$\frac{\sin 5x}{x}$、$\frac{\sin 3x}{\sin 5x}$、$\frac{\tan x}{x}$、$\frac{1-\cos x}{x^{2}}$ に加えて、$x \to \pi$ と $x \to \infty$ の場合、$\frac{\sin x - \tan x}{x^{3}}$ まで計算例を並べ、$(\sin x)' = \cos x$ が出るところまで追いました。