x=0.1 のとき xsinx=0.99833、x=0.01 なら 0.9999833 です。x を 0 に近づけると 1 に向かいます。
x→0limxsinx=1
x=0 を代入すると 00 で、値が決まりません。近づけた先だけが決まる、という形の等式です。
角はラジアンで測ります。度で測ると答えが変わる。理由はあとで見ます。
弧の長さと弦の長さ
半径 1 の円で、中心角 x ラジアンの弧の長さは x です。一方、その角に対する y 座標が sinx。
角を小さくすると、弧はまっすぐに近づきます。曲がった長さ x と、まっすぐな長さ sinx の比が 1 に寄る[2]。
これを面積の大小で確かめます。単位円上に O=(0,0)、A=(1,0)、P=(cosx,sinx)、Q=(1,tanx) をとります[3]。
三角形 OAP の面積は 2sinx、扇形 OAP は 2x、三角形 OAQ は 2tanx です。
内側から外側へ入れ子になっているので、この順に大きくなります[3]。
2sinx≤2x≤2tanx
はさみうちの形に直す
各辺を 2 倍し、0<x<2π では sinx>0 なので sinx で割ります。
1≤sinxx≤cosx1
逆数をとると不等号の向きが変わり、目的の形になる[1]。
cosx≤xsinx≤1
左端は x→0 で 1、右端は定数の 1。両側が同じ値に向かうので、あいだの xsinx も 1 です。
負の側も同じ値になります。−xsin(−x)=−x−sinx=xsinx で、符号が 2 つとも消えるためです。
左右の極限が一致するので、x→0 の極限として 1 が確定します。
ラジアンでなければ成り立たない
x を度で測ると、この極限は 1 になりません。sin1∘=0.017452 なので、比は 0.017452 です。
行き先は 180π=0.0174533。弧の長さが x になるのはラジアンで測ったときだけなので、当然といえば当然です[2]。
度で測ると導関数にも 180π が居座り、(sinx∘)′=180πcosx∘ になります。
余計な定数を出さないための約束がラジアンです。e を対数の底に選ぶのと同じ理由。
例:xsin5x
角の中身が 5x なので、分母もそろえます。
x→0limxsin5x=x→0lim5xsin5x⋅5=1⋅5=5
t=5x と置けば x→0 は t→0 で、tsint→1。角の係数がそのまま答えになります。
例:sin5xsin3x
分子と分母をそれぞれ x で割る形に持ちこみます。
sin5xsin3x=5xsin5x⋅5x3xsin3x⋅3x→1⋅51⋅3=53
角の係数の比が残る。sin どうしの比は、中身の比に落ちます。
例:xtanx
tanx=cosxsinx と分けます。
xtanx=xsinx⋅cosx1→1⋅1=1
cosx→1 なので効きません。tan も 0 の近くでは x と同じ振る舞いをします。
例:x21−cosx
分子と分母に 1+cosx を掛け、1−cos2x=sin2x を作ります。
x21−cosx=x2(1+cosx)(1−cosx)(1+cosx)=(xsinx)2⋅1+cosx1→1⋅21=21
x=0.1 で 0.49958、x=0.01 で 0.4999996。数値でも 21 に寄っています。
半角の公式 1−cosx=2sin22x を使う道もあります。
x22sin22x=212xsin2x2→21
有理化で進む
1+cosx を掛けて sin2x を作る。根号の有理化と同じ手つき
半角で進む
2sin22x に直す。角が半分になるぶん、係数の 21 が先に出る
例:分母が x のとき
x1−cosx は 0 に向かいます。上の結果に x を掛けるだけ。
x1−cosx=x21−cosx⋅x→21⋅0=0
分母の次数が 1 つ下がると答えが 0 になる。この差が cos の導関数が原点で 0 になることに対応します[2]。
例:x→π のとき
x→πlimx−πsinx を求めます。近づく先が 0 でないので、置きかえます。
t=x−π とすると x→π は t→0 で、sin(π+t)=−sint。
x−πsinx=t−sint→−1
0 以外へ近づく問題は、まず 0 へ寄せる置きかえを探します。
例:x→∞ のとき
x→∞limxsinx は 0 です。sinx が −1 と 1 のあいだで揺れ続けるので、分母だけが伸びる。
−x1≤xsinx≤x1
両端が 0 に向かうので、はさみうちで 0 に決まります[1]。同じ式でも近づく先が違えば答えも違う。
x=0 に値 1 を割り当てて全域で定義した関数は sinc と呼ばれます。∫−∞∞xsinxdx=π という値を持つ関数です[4]。
一次の近似として見る
xsinx→1 は、0 の近くで sinx が x とほぼ等しいという意味です。
原点のまわりを拡大していくと、y=sinx の曲線と直線 y=x の区別がつかなくなります。
1−cosx のほうは 2x2 とほぼ等しい。次数が 1 つ上がるので、近づき方はもっと平らです。
tanx も x に近い。こちらは x より少し大きい。
1−cosx は 2x2 に近い。x の 1 次では 0 に見える。
導関数がここから出る
sinx の導関数を定義から出します。加法定理で sin(x+h) を開くところから始めます[2]。
(sinx)′=h→0limhsin(x+h)−sinx=h→0lim(sinx⋅hcosh−1+cosx⋅hsinh)
前の括弧が 0、後ろが 1 に向かいます。残るのは cosx だけ。
(sinx)′=cosx
cosx についても同じ手順で (cosx)′=−sinx が出ます[2]。三角関数の微分は、この 2 つの極限だけで成り立っています。
例:微分の値として読む
x→0limxsinx は、f(x)=sinx の x=0 における微分係数そのものです。
f′(0)=x→0limx−0sinx−sin0=x→0limxsinx
f′(0)=cos0=1 なので値は 1。ただしこの読み方で証明にはできません。
(sinx)′=cosx を導くのに xsinx→1 を使っているので、循環します。
面積で挟む議論は、扇形の面積が 2x であることを前提にしています。
角を弧の長さで定義しておけば、この前提は定義から直に出る。ドイツ語の教科書ではその順序で組まれている。
例:3 次まで見る
x→0limx3sinx−tanx を求めます。sin と tan の差は x の 1 次では消えます。
sinx−tanx=sinx(1−cosx1)=cosxsinx(cosx−1)
分母の x3 を x⋅x2 に分けて配ります。
xsinx⋅x2cosx−1⋅cosx1→1⋅(−21)⋅1=−21
tanx のほうがわずかに大きいので、差は負になります。
よくある誤り
角を度のまま計算する。公式はラジアンでしか成り立ちません。
sin5x の分母を x のままにする。5x にそろえてから係数を出します。
x→0 以外の問題で公式を直に当てる。まず 0 へ寄せる置きかえを探します。
x21−cosx を 0 と答える。分子も分母も 2 次なので、比は 21 に残ります。
xsinx の x→∞ を 1 と答える。こちらは 0 です。
sinx≤x を負の x でも使う。不等式は x>0 の範囲で立てたものです。
x→0limtan3xsin2x はいくつですか。
__RESULT__
2xsin2x⋅2x と 3xtan3x⋅3x に直すと、比は 32 です。23 は分子と分母を入れかえた値、1 は係数を無視した値になります。
分母の次数が変わると答えも変わります。
x→0limx21−cos2x はいくつですか。
__RESULT__
1−cos2x=2sin2x なので x22sin2x→2 です。21 は角の 2 倍を落とした値、41 は係数を割ってしまった値になります。
弧と弦の長さが 0 の近くで見分けられなくなる。この一点から、三角関数の微分が全部出てきます。
参考文献
*The Limit Laws*. Calculus Volume 1, OpenStax. Gilbert Strang. *Derivative of the Sine and Cosine*. Highlights of Calculus, MIT OpenCourseWare. Oliver Deiser. *Ableitung von Kosinus und Sinus*. Einführung in die Mathematik 1.1. Sinc Function. Wolfram MathWorld.
$x = 0.01$ で $0.9999833$、$x = 0.001$ で $0.99999983$。単位円に三角形と扇形と三角形を並べて面積を比べると $\cos x \leq \frac{\sin x}{x} \leq 1$ が出て、両側が $1$ へ寄ります。度で測れば行き先は $\frac{\pi}{180}$ に変わる。$\frac{\sin 5x}{x}$、$\frac{\sin 3x}{\sin 5x}$、$\frac{\tan x}{x}$、$\frac{1-\cos x}{x^{2}}$ に加えて、$x \to \pi$ と $x \to \infty$ の場合、$\frac{\sin x - \tan x}{x^{3}}$ まで計算例を並べ、$(\sin x)' = \cos x$ が出るところまで追いました。
2xsin2x⋅2x と 3xtan3x⋅3x に直すと、比は 32 です。23 は分子と分母を入れかえた値、1 は係数を無視した値になります。