春すぎて
夏来にけらし
白妙の
衣ほすてふ
天の香具山
現代語訳
春がすぎて
夏がきたらしい
真っ白な
衣を干すという
天の香具山だからよ
文法
夏来にけらし
夏
来…カ行変格活用「来」連用形
に…助動詞(完了)「ぬ」連用形
け…助動詞(過去)「けり」連体形(がつづまったもの)
らし…助動詞(推量)「らし」終止形
「に」は助詞ではなく完了の助動詞。「けらし」は「けるらし」が短くなったもの。
白妙の衣ほすてふ
「白妙」は白い布で、ここでは真っ白という形容詞として衣にかかります。「白妙の」は衣、雲、雪などにかかる枕詞です。
「てふ」は「という」が短くなったもの。「真っ白な衣を干すという」と訳します。ちなみに「てふてふ」は蝶々のこと。
天の香具山
奈良県橿原市にある山で大和三山の一つ。大和三山はすべて奈良県橿原市にあり、中大兄皇子は大和三山の歌を万葉集に残しています。
大和三山
天の香具山
畝傍山(うねびやま)
耳成山(みみなしやま)
注 耳成山は「みみなり」ではなく「みみなし」と読む
作者
持統天皇(六四五~七〇二)

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