前の記事と同じ箱を使います。 個の粒子それぞれに、左か右かが決まっている。その決まり方 1 つを 1 つの状態と数えます。粒子を見分けて数えるので、状態は全部で 個あります。
左に 個いる、というのは状態 1 つを指す言い方ではありません。それにあたる状態が 個ある、という言い方になります。図は で の場合で、どれも「左に 2 個」でありながら別の状態です。
どの状態も同じだけ起こると認めてしまえば、 の大きいものほど起こりやすいことになります。この認め方を等重率といい、次の章で正面から扱います。いまはそれを認めた上で、 を数える手つきだけを見ていきます。
はすぐに手に負えなくなります。 の真ん中でも は を超え、 ともなれば桁数そのものが天文学的です。書き下せない数を持ち歩いても仕方がありません。
そこで を見ます。 が とともに指数で伸びるぶん、 は に比例して伸びる素直な量になります。図の左が 、右が で、同じものを 2 通りに描いてあります。
階乗のままでは微分もできないので、 で置き換えます。スターリングの近似といい、 が大きいほどよく合います。これで が手で書ける式になり、あとから で微分できるようになります。
状態を全部足すと です。いっぽう、いちばん大きい項は左右が半々のときの 1 本で、その高さは を 程度で割ったものにあたります。
つまり和と最大項の違いは 倍でしかありません。 を取れば違いは になり、 に比べて消えてしまいます。図の棒のうち、色を付けた 1 本が最大項です。
ですから和を最大項で置き換えてしまってよい、ということになります。最大項の方法といい、統計力学ではこの先ずっと使います。足し上げるかわりに、いちばん大きいところを探せばよくなります。
粒子の位置と運動量は連続な量なので、左か右かのようには数えられません。横に位置 、縦に運動量 を取った平面を考えます。位相空間といいます。1 つの状態はこの平面の 1 点で、点は数え切れません。
そこで平面を升目に刻み、升目 1 つを 1 状態と数えます。刻む細かさはプランク定数 です。 と の積は作用の次元を持ち、 も同じ次元なので、面積を で割ると数になります。図の格子がその升目です。
自由度が なら位相空間は 次元で、状態数はその体積を で割ったものになります。 で刻むことは量子力学から出てきますが、ここでは「連続なものを数えるには単位が要る」というだけで十分です。
箱に閉じこめた理想気体 個で、エネルギーが 以下の状態を数えます。運動エネルギーの和が 以下という条件は、 次元の空間で半径が の球の内側です。その体積を取ると、 は の 乗に比例することが出ます。
指数の は の桁です。 がたった 増えるだけで、 は をその指数だけ累乗した倍率になります。図の曲線が壁のように立って見えるのは、指数を小さく取ってなお、この形になるからです。
この増え方の速さそのものが、次の章で温度になります。 を で微分したものが にあたる、という話です。数え方の道具は、ここまでで足ります。