司法試験 短答式 2025 民法 第30問

不法行為に関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No.30])
  1. 良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵沢を日常的に享受している者は、この者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益が違法に侵害されたことをもって、不法行為による損害賠償を請求することができる。
  2. 疾病のため死亡した患者の診療に当たった医師の医療行為が、その過失によって医療水準にかなったものでなかった場合において、医療水準にかなった医療が行われていたとすれば患者がその死亡の時点でなお生存していた相当程度の可能性の存在が証明されたときは、その医療行為と患者の死亡との間における因果関係が肯定される。
  3. ある事実を基礎としての論評の表明によって他人の名誉を毀損した場合において、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったときは、人身攻撃に及ぶなど論評としての域を逸脱したものでない限り、その行為は、違法でない。
  4. 労働者Aが、第三者Bの過失による事故によって負傷し、この事故を原因として労働者災害補償保険法に基づく保険給付を受けた。この場合におけるBのAに対する損害賠償責任について、Aの過失をもって過失相殺をすべきであり、かつ、Aが受けた保険給付の価額を控除すべきときは、損害賠償の額は、まず過失相殺による減額をし、その残額から保険給付の価額を控除する方法により算定する。
  5. 人の身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
  1. 1 ア イ
  2. 2 ア エ
  3. 3 イ オ
  4. 4 ウ エ
  5. 5 ウ オ

正答 2(配点 2)

参考

正解は2(正しいのはア・エ)。ア:良好な景観の恵沢を日常的に享受する者の景観利益は法律上保護に値し、その違法な侵害は不法行為を構成し得る(国立景観訴訟、最判平成18年3月30日)。エ:過失相殺と損益相殺的調整(保険給付の控除)の順序は、まず過失相殺により減額し、その残額から保険給付の価額を控除する(過失相殺後控除。最判平成元年4月11日)。イ:相当程度の可能性が証明されたときは、その可能性の侵害自体が損害賠償の対象となるのであって、医療行為と死亡との間の因果関係が肯定されるわけではない(最判平成12年9月22日)から誤り。ウ:公正な論評として違法性が阻却されるには、前提とする事実の重要部分が真実であること等も必要であり、本記述はこれを欠くから誤り。オ:人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、損害及び加害者を知った時から5年である(民法724条の2)から、3年とするのは誤り。

自作の解説(不法行為に関する規定および参照判例に基づく)

関連条文

関連判例

出典 法務省 令和7年司法試験 短答式試験 問題集[民法]第30問/民法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00267.html