司法試験 短答式 2025 刑法 第20問
【事例】に関するアからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No.32]から[No.36]) 【事例】甲は、乙から現金をだまし取ろうと考え、某月1日、不正な細工を施した花札を用いて賭博の初心者である乙を負けさせ、乙に300万円の債務を負担させた。(①) 乙は、同月2日、賭博の常習者である丙に相談したところ、丙は、乙に対し、再び賭博をするよう教唆した。乙は、再び賭博をすることを決意し、同月3日、別の賭博場で賭博をしたが負けたため、更に300万円の債務を負った。(②) 乙は、同月5日、高額収入が得られる旨をうたう求人サイトに応募したところ、同サイトを運営していた丁から、不正に入手したクレジットカードの名義人Aを装って電子マネーの購入手続をするよう依頼されてこれに応じ、インターネットを介して、Aの氏名やカード番号等の情報をクレジットカード決済代行会社が使用する電子計算機に送信し、同電子計算機に接続されたハードディスクにAが10万円相当の電子マネーを購入した旨の電磁的記録を作成して同電子マネーの利用権を取得した。(③) 丁は、不特定多数の者に電話をかけ、真実は違約金を支払う必要がないのに、これを支払う必要がある旨のうそを告げ、某所に現金を送付させて詐取することを繰り返していた。丁は、乙の応募に先立つ同月4日、Bに電話をかけ、前同様のうそを告げ、現金を某所に送付するよう指示した。Bは、うそを見破って警察官に通報したところ、警察官から丁の上記指示に従ったふりをするよう依頼され、同月5日、模造紙幣が入った荷物を某所に発送した。乙は、同月6日、丁から、上記指示内容について説明を受けるとともに上記荷物を受領して丁に届けるよう依頼され、同荷物が詐欺の被害金であると認識した上でこれに応じ、いわゆるだまされたふり作戦の開始を認識しないまま某所で宅配業者から同荷物を受領したが、その場で警察官に逮捕された。(④) 丁は、乙が逮捕されたことを知り、同月7日、知人の戊に対し、自己の逃走資金の提供を依頼した。戊は、同日、丁が現金の詐取を繰り返していたことを認識した上で、逃走資金として現金100万円を丁に手渡した。(⑤)
- ア ①につき、甲は、公序良俗に反する無効な行為を原因として乙に債務を負担させているので、甲に詐欺罪は成立しない。
- イ ②につき、正犯である乙に単純賭博罪が成立するにすぎないので、丙が賭博の常習者であったとしても、丙に単純賭博罪の教唆犯が成立するにとどまる。
- ウ ③につき、乙が上記電子計算機に送信したAの氏名やカード番号等はいずれも真正なものであり、「虚偽の情報」に当たらないので、乙及び丁に電子計算機使用詐欺罪の共同正犯は成立しない。
- エ ④につき、乙は、だまされたふり作戦の開始後に加功しているので、乙の加功前になされた欺罔行為を含む詐欺未遂罪の共同正犯は成立しない。
- オ ⑤につき、犯人が他人を教唆して自己を隠避させることは定型的に期待可能性がないので、丁に犯人隠避罪の教唆犯は成立しない。
- 1 正しい
- 2 誤っている
正答 2,2,2,2,2(配点 4)
参考
正解はア=2、イ=2、ウ=2、エ=2、オ=2(全て誤り)。ア:賭博の勝敗が不正な細工により仕組まれている場合、相手を欺いて財産的処分をさせたものとして詐欺罪が成立するから、「成立しない」とするのは誤り。イ:常習者が非常習者の賭博を教唆した場合、教唆者には常習賭博罪が成立し得るから、「単純賭博罪の教唆犯にとどまる」とするのは誤り。ウ:不正に入手したカードの名義人を装って電子マネーを取得する行為は、たとえ送信した情報自体が真正でも電子計算機使用詐欺罪にいう「虚偽の情報」を与えたものに当たるから、共同正犯不成立とするのは誤り。エ:だまされたふり作戦の開始後に共謀の上加功した者にも、加功前の欺罔行為を含む詐欺未遂罪の共同正犯が成立する(最決平成29年12月11日)から誤り。オ:犯人が他人を教唆して自己を隠避させた場合、犯人隠避罪の教唆犯が成立する(判例)から、「成立しない」とするのは誤り。
自作の解説(詐欺罪・賭博罪・犯人隠避罪等に関する判例に基づく)
関連条文
関連判例
- だまされたふり作戦と詐欺未遂の共同正犯(最決平成29年12月11日刑集71巻10号535頁)
出典 法務省 令和7年司法試験 短答式試験 問題集[刑法]第20問/刑法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00267.html