司法試験 短答式 2025 刑法 第9問
公務執行妨害罪に関するアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからオの順に[No.11]から[No.15])
- ア 甲は、日本国内にある外国大使館の職員Aが同大使館の業務に従事していた際、Aの頭部を拳で殴った。この場合、Aは「公務員」に当たらないから、甲に公務執行妨害罪は成立しない。
- イ 甲は、通行人のバッグをひったくり窃取したが、これを目撃した制服警察官Aから追跡されたため、逮捕を免れる目的で、Aに対し、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた。この場合、甲に事後強盗罪が成立するから、公務執行妨害罪は成立しない。
- ウ 甲は、県議会の議事が紛糾し、議長Aが休憩を宣言した後、その紛議に対処するために壇上から降りようとした際、Aの腹部を蹴った。この場合、Aが上記議会の議事を整理し、秩序を保持する職責を有する者であるとしても、休憩宣言により職務の執行を終えているから、甲に公務執行妨害罪は成立しない。
- エ 甲は、制服警察官AがBに対して実施していた所持品検査をやめさせようと考え、Aの背部を蹴ったが、Aが同所持品検査を中断することはなかった。この場合、現実にAの職務の執行を妨害する結果が発生していないから、甲に公務執行妨害罪は成立しない。
- オ 甲は、警察官Aから捜索差押許可状に基づく自宅の捜索を受け、覚醒剤入りの注射器20本を差し押さえられた際、Aの眼前で同注射器20本を足で踏み付けて、その全てを壊した。この場合、Aの身体に対して暴行を加えていないから、甲に公務執行妨害罪は成立しない。
- 1 正しい
- 2 誤っている
正答 1,2,2,2,2(配点 4)
参考
正解はア=1、イ=2、ウ=2、エ=2、オ=2。ア:外国大使館の職員は日本の「公務員」に当たらないから、その職務に対する暴行に公務執行妨害罪は成立せず、正しい。イ:事後強盗罪が成立しても、警察官の職務執行を妨害する暴行については別に公務執行妨害罪が成立する(観念的競合)から、「成立しない」とするのは誤り。ウ:議長が休憩を宣言した後でも、紛議に対処する職務の執行中といえるから公務執行妨害罪が成立し(最決平成元年3月10日)、誤り。エ:公務執行妨害罪は職務妨害の結果が現実に発生することを要せず、職務執行中の公務員に対する暴行があれば成立するから誤り。オ:公務執行妨害罪の「暴行」は公務員の身体に直接加えられる必要はなく、職務の執行に向けられた物に対する有形力(間接暴行)でも足りるから、誤り。
自作の解説(公務執行妨害罪に関する判例に基づく)
関連条文
出典 法務省 令和7年司法試験 短答式試験 問題集[刑法]第9問/刑法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00267.html