多くの学生は問題を最後まで解きます。やり方がわかって、残るは面倒な計算だけとなっても、答えを求めるまで問題に向きあう。
しかし、解法がわかった問題は攻略したも同じ。わかる問題を解くのと、わからない問題を解くのと、どちらが「数学力」の修練になるでしょうか?

計算力をつけるためにわかる問題を解くのは大事だけど、限度があるよ!
効率の差を計算する
数学を最後まで解く太郎と、解法がわかったら途中でやめる花子を比較します。二人とも月刊「大学への数学」を勉強していると仮定し、両者ともレベル A はだいたい解けて、レベル C に苦戦している感じとします。
レベル A を全力で解く
(1 問 15 分 × 15 問)
レベル B も全力で解く
(1 問 20 分 × 15 問)
レベル A は無視
レベル B は難しい問題だけ解く
(1 問 20 分 × 3 問 + 1 問 5 分 × 3 問)
花子は B だけを勉強します(6 問)。半分は途中で放棄(1 問 5 分)し、半分は本気でとりかかります(1 問 20 分)。放棄する問題は途中で解法がわかった問題です。解法がわからない問題だけを本気でやります。
太郎と花子の勉強時間差 T は
となります。「大学への数学」だけで太郎は花子よりも 8 時間も多く勉強しました。
大学受験では、難易度が高くなるにつれて、計算力以外のスキルが重要になります。さまざまなパターンを記憶し、それに合わせて論理を展開できる複合的な思考力です。
太郎は花子より計算力を身につけましたが、「計算力以外のスキル」に関して二人の習得量はほとんど変わらないと言えます。わかる問題を解いても、新しいパターンの記憶に結びつかないからです。
その後、花子は節約した 8 時間を「赤チャート数学」に使いました。この時点で二人の勉強時間は等しくなりますが、花子は太郎の何倍も未知のパターンに遭遇し、記憶します。
「計算力」自体もパターンに依存するから、長期的には計算力さえも花子は太郎を超えていきます。

わかる作業でなく、わからない問題に時間を使う
模擬試験で「解法はわかった。あとは計算だけ!」となったら安心しませんか? それは、やり方がわかった時点で残りは作業でしかないと知っているからです。
それなのに、受験生は普段の勉強で「作業でしかない残り」に時間をたくさん使います。数学的な能力が一番試されるのは解法の発見にあると知りながら。
ゲームをプレイしている人はデイリーミッション(素材の回収)とボス戦を想像するといいかもしれない。素材集めはわかる問題、ボスはわからない問題。

素材集め……最初は頭を使うけど、しばらくすると作業になるよね。わかる問題も同じだよ。
武器を効率よく集めたとして、ボスを倒すギミックの理解があいまいだったら、そのゲームを深く理解していると言えるでしょうか?
そもそも、あなたの脳は毎日の作業(わかる問題)より、なかなか倒せないボスをどうにか倒すこと(わからない問題)にゲーム性(数学)を感じているはずです。