対角行列は、対角線の上だけに数が並び、ほかがすべて 0 の行列です。これを平面のベクトル (x, y) にかけると、答えは (λ₁x, λ₂y) になります。x には λ₁ だけ、y には λ₂ だけが掛かり、たがいに混ざりません。上のアニメーションで格子が縦横に伸び縮みするばかりで、傾いたり回ったりしないのはそのためです。
混ざらないので、何回かけても形は変わりません。D を n 回かけた Dⁿ は、対角に λ₁ⁿ と λ₂ⁿ を並べただけの行列です。途中を全部たどらなくても、n 回目にベクトルがどこにいるかは (λ₁ⁿx, λ₂ⁿy) と一息に書けます。ふつうの行列でべき乗を求めるのは骨が折れますが、対角行列にかぎっては掛け算が指数の足し算に化けます。
そこから、繰り返したときの行き先が倍率だけで決まります。絶対値が 1 より大きい方向はどこまでも伸び、1 より小さい方向は 0 へ吸い込まれ、ちょうど 1 なら動きません。倍率が負なら 1 回ごとに向きが裏返り、0 なら 1 回で直線に潰れて二度と戻れません。このとき行列式は 0 で、逆行列もありません。どの場合も例から試せます。