司法試験 短答式 2024 刑法 第4問

次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。
  1. 医師ではない甲は、女性Aに対し、医学的に必要とされる措置を採らず、身体に重大な傷害を生じさせかねない危険な方法で豊胸手術を行った。Aが豊胸手術に伴う身体傷害についてあらかじめ承諾していた場合、甲に傷害罪が成立することはない。
  2. 甲は、自動車の転落事故を装いAを自殺させて保険金を得る目的で、極度に甲を畏怖していたAに対し、暴行・脅迫を加え、岸壁上から自動車ごと海中に転落して自殺することを執ように要求し、Aをして甲の命令に従う以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせてA自ら岸壁上から自動車ごと海中に転落させたが、その後、Aが岸壁上に逃れて生き延びた。この場合、A自らが死亡する現実的危険性の高い行為を選んだから、甲に殺人未遂罪が成立することはない。
  3. 甲は、4歳の実子Aから甲に殺害されることの承諾を得て、殺意をもってAを包丁で刺殺した。この場合、Aが殺害されることを承諾しているから、甲に殺人罪が成立することはない。
  4. 甲は、妊娠している妻Aと話し合い、その承諾を得て、薬物を使用して堕胎させた。この場合、堕胎についてAが承諾をしているから、甲に不同意堕胎罪が成立することはない。
  5. 甲は、半日以内にAに返す約束でAの承諾を得て、A所有の自動車をAから借り受けたが、同車を運転するうちに、約束どおり同車をAに返すことが惜しくなり、Aに無断でそのまま10日間にわたり同車を乗り回した。この場合、甲に横領罪が成立することはない。

正答 2,2,2,1,2(配点 4)

参考

正解はア2・イ2・ウ2・エ1・オ2。ア:身体に重大な傷害を生じさせかねない危険な方法による施術は、被害者の承諾があっても違法性は阻却されず傷害罪が成立する(最決昭和55年11月13日)から、成立しないとするのは誤り。イ:極度に畏怖させて自ら死の危険が高い行為を選ばせた行為は殺人の実行行為に当たり、被害者が生き延びても殺人未遂罪が成立する(最決平成16年1月20日)から誤り。ウ:4歳の幼児に生命の放棄についての有効な承諾能力はなく、殺人罪が成立するから誤り。エ:妻の承諾を得た堕胎は同意堕胎の問題であり、不同意堕胎罪は成立しないから正しい。オ:返還の約束に反して長期間乗り回す行為は横領罪に当たるから、成立しないとするのは誤り。

自作の解説(刑法の被害者の承諾に関する判例に基づく)

関連条文

関連判例

出典 法務省 令和6年司法試験 短答式試験 問題集[刑法]第4問/刑法の正解及び配点 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00241.html