ヤスパース(高校倫理・実存主義)

ヤスパースは実存主義の哲学者です。死や病気といった限界状況にある時、人は神のような超越者に会い、本当の自分を理解すると考えました。

センター試験・2019 年第一問(問 7)改題

自己のあり方をめぐる様々な思想の説明として最も適当なものを選びなさい。

  1. ヤスパースは、死や争いなどの困難な状況を克服し、自己の無限の可能性にめざめた者が新たに他者と相対することを、「実存的交わり」と呼んだ。
  2. トルストイは、二度の世界大戦を招いた文明の病理を克服すべく、「生命への畏敬」に基づき自己をあらゆる生命体の同胞とみなすことを説いた。
  3. 小林秀雄は、戦前の日本の超国家主義を「無責任の体系」と批判し、自由と責任を内面化した自己を確立することが戦後の課題である、と主張した。
  4. 坂口安吾は、敗戦に戸惑う日本の人々にあえて「堕ちよ」と説き、旧来の道徳に寄りかからず、ありのままの自己と向き合うべきである、と論じた。

編集者注
一部の漢字をひらがなにしました。

解答

答えは 4 です。4 は坂口安吾に関する正しい文となります。坂口安吾の「堕落論」は青空文庫に掲載されています。

1 は誤り。ヤスパースは「死や争いなどの困難な状況を克服する」よりも、限界状況によって実存を知るという見方をとっています。「実存的交わり」そのものはヤスパースを表す言葉です。

2 は誤り。トルストイは 1910 年に亡くなった作家です。「生命への畏敬」はシュヴァイツァーに関するテーマ。

3 の「無責任の体系」は丸山眞男の言葉。丸山眞男は第二次世界大戦の反省をふまえて、日本の社会と政治にある無責任の構造を説明しました。