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利息を細かく刻んでも 2.72 倍で止まる〜ネイピア数 e と自然対数の底

と小さくしながら を計算すると、 と値が動きます。行き先は

この数を と書き、自然対数の底、またはネイピア数と呼びます[5]

と置けば の形になる。指している数は同じです。

1 年に何回利息をつけるか

この極限は複利の計算から出てきました。ヤコブ・ベルヌーイが 1683 年に調べた問題です[1]

年利 100% で 1 万円を預けます。1 年に 1 回だけ利息がつくなら、1 年後は 2 万円。

半年ごとに 50% ずつつけると 倍になり、少し得をします。

刻む回数を増やすほど有利になる。では毎日、毎秒と刻めばいくらでも増えるのか。増えません。

刻む回数を とすると、1 年後の倍率が です。 を無限に飛ばした先が

ベルヌーイは二項定理を使い、この極限が のあいだにあることまで示しました[1]。数が極限で定義された最初の例といわれます。

例:連続複利

年利 回に刻む、 年後という設定なら、元利合計は です[2]

と置くと の形が現れ、 に向かいます。

刻みを消した極限が指数関数になる。銀行の計算式が、そのまま の定義になっています。

2 と 3 のあいだに閉じこめる

を二項定理で開くと、上からの評価が作れます。

括弧はどれも 以下なので、全体は 以下です。

さらに では が成り立ちます。 の各因子が 以上だからです。

上限 が出ました[3]。下限は の値 で足ります。

指数を 増やした は、逆に上から減りながら に近づきます。同じ数を上下から挟む形。

単調に増えることを示す

上に有界なだけでは足りません。増え続けることを示せば、収束が確定します[3]

比をとって 以上を確かめる形にします。 と置く。

ここでベルヌーイの不等式 )を使います。 と置く。

分子が分母より だけ大きいので、比は必ず を超えます[3]

上に有界で単調増加なら収束する。この定理があるので、極限の値を知らないまま存在だけを先に決められます

値のほうは、あとから数値計算や級数で追いかければよい。

階乗の和としての表示

上の評価で使った そのものが になります。オイラーが 1748 年に与えた形です[1]

項で まで出ます。極限の定義より収束が速く、手計算で桁を伸ばすならこちらが実用的です。

オイラーはこの級数から 桁を計算しました[1] が無理数であることも彼が 1737 年に示しています[5]

極限による定義

でも小数第 3 位までしか合わない

級数による表示

項で小数第 7 位まで合う

例:指数が の形

を求めます。指数を分けるだけで済む。

です。指数の係数が、そのまま の肩に乗ります。

例:分子が の形

では、 に直します。

と置くと で、 と同じこと。

一般に です。連続複利の式と同じ変形になっています。

例:符号が負の形

の場合にあたります。

と置くと となり、 でも へ向かう性質から

は下から に近づきます。

例:分母がずれている形

を求めます。まず と書き直す。

指数を にそろえたいので、余分な 回ぶんを外へ出します。

分母は に収束するので効きません。指数のずれは、この形で吸収できます。

例: の形に直す

では、指数を にそろえます。

と置けば 。中身と指数の逆数をそろえる、という一手だけです。

を定義に持つ 2 つの極限

の値がそのまま効く極限が 2 つあります。どちらも微分の公式を生みます。

左は から出ます。定義の式に対数をとっただけ。

右は と置くと で、 の形になり、左の逆数として に向かいます。

右の極限は「 での接線の傾きが 」と言いかえられます[4]

底を にすると傾きは にすると 。ちょうど になる底が です。

例:底が のとき

を求めます。 と書き直す。

と置くと で、 と同じです。

なら なら 。接線の傾きの値と一致します。

微分の公式が から出る

導関数の定義に、いま求めた極限を入れます。 から始めます。

微分しても形が変わらない関数になりました[4]。高さと傾きがどの点でも等しい。

底が なら、同じ計算で が残ります。

例:対数の微分を定義から出す

の導関数も、同じ 2 つの極限だけで出ます。

底を にすると が分母に残り、 となります。

を底に選ぶと、この余分な定数が消える。数学で対数の底を省くのは、そのためです。

を微分しても のまま。
の導関数は で、余計な係数がつかない。
底が 以外だと が掛かるか、分母に残る。

補足:計算機で確かめると崩れる

定義の式をそのまま表計算に入れると、 を小さくするほど精度が上がる、とはなりません。

では そのものに丸められ、 の何乗を計算しても です。

その手前でも桁が食い違います。 を記録した時点で下位の桁が落ち、それを 乗して誤差が拡大するためです。

極限が正しくても、有限桁の計算では途中で折り返します。数値実験は あたりまでにとどめておく。

はいくつですか。

__RESULT__

と置くと になります。指数の がそのまま肩に乗り です。 は指数の を落とした値、 は分子の を落とした値になります。

対数の側も確かめます。

はいくつですか。

__RESULT__

と書き直すと、前半が に向かうので です。 は係数を出し忘れた値、 の答えととり違えた値になります。

刻みを細かくしても倍率が止まる。その止まる先が で、微分の公式もそこから出てきます。

参考

The number e. MacTutor History of Mathematics Archive, University of St Andrews.
*Exponential and Logarithmic Functions*. Calculus Volume 1, OpenStax.
*Nachweis der Konvergenz der Folge*. Universität Leipzig, Analysis.
David Guichard. *Derivatives of the exponential and logarithmic functions*. Whitman College.
e. Wolfram MathWorld.
年利 100% を半年ごとに刻むと 2.25 倍、毎日なら 2.71456 倍。どれだけ細かくしても $2.718281828\ldots$ を超えません。この頭打ちの値が $e$ です。二項定理で上限 $3$ を出し、ベルヌーイの不等式で単調に増えることを示せば、収束はそこで決まる。$\left(1+\frac{2}{n}\right)^{n}$ や $\left(1-\frac{1}{n}\right)^{n}$、$(1+3x)^{1/x}$ の計算を 5 通り並べ、$\frac{\log(1+x)}{x} \to 1$ と $\frac{e^{x}-1}{x} \to 1$ から $(e^{x})' = e^{x}$、$(\log x)' = \frac{1}{x}$ を出すところまで。表計算で $h$ を小さくしすぎると値が逆に離れていく理由も添えました。