可換代数入門(Atiyah‐MacDonald 著)は共立出版から出ている環と加群の入門書で、Introduction To Commutative Algebra の日本語版です。本書は可換環論や代数幾何学を本格的に勉強したい人におすすめしたい一冊です。
本書は環と加群を主に扱っています。体とガロア理論は含まれていません。数学ではハーツホーンなどの代数幾何学の入門書として位置づけられています。ハーツホーンは三巻あり、一巻のボリュームは本書と同じくらい。
説明は基本的にわかりやすく、重要なポイントとそうでないポイントで詳しさに差をつけています。各章に練習問題がたくさんついてあり、解説を読むこと以上にこの問題を解くほうが勉強になるかもしれない。
代数幾何学の基本としての可換環論
可換環は幅が広くきりがありませんが、本書は代数幾何学で必要になるポイントに的を絞っています。例えば spec、ネーター環、離散付値環、正則局所環など。本書の最終章は正則局所環ですが、これは代数幾何学で使われる重要な環です。
可換環そのものをより深く勉強したいときは共立出版の「可換環論(松村)」がいいと思います。
使い方
私は大学三年生のとき、輪講というスタイルで勉強しました。二人から四人くらいがグループを作り、説明したり質問に答えたりするというコミュニケーション重視の授業でした。
毎週、各章の定理や命題を証明し、問題をできるだけたくさん解いていました。二ヶ月くらい経って痛感したことは、章末問題を飛ばしていくとだんだん泥沼に入っていくということです。式や図を紙に書く習慣は功を奏します。
本書の面白さは最終章の次元論にあります。ここを理解できれば、ハーツホーンなどの代数幾何学系の本を読むときの負担が減ります。