右手系 3 次元座標とベクトルの外積|定義と公式、大きさは平行四辺形の面積
外積は 2 つのベクトルから 1 つのベクトルを作る演算です。内積が数を返すのに対し、こちらは向きを持ったものが返ってくる。
は と の両方に直交する単位ベクトルです。垂直な向きは上下 2 つあるので、どちらをとるかを決める約束が要る。それが右手の法則。
答えがベクトルであることが、この演算の使いどころを決めている。平面に垂直な向きが要る場面、回転の軸が要る場面で、そのまま答えになるからです。

右手系と左手系
3 次元の座標には右手系と左手系がある。右手の親指と人差し指と中指を互いに直交するように開き、親指を 軸、人差し指を 軸、中指を 軸に当てたものが右手系です。
親指と人差し指をそのままにして、中指と真逆の向きを 軸にとれば左手系になる。鏡に映すと一方が他方に移ります。
外積を考えるときは右手系を使う。左手系で同じ手順をたどると、答えの向きが逆に出てしまうからです。
どちらが正しいという話ではなく、決めごと。数学と物理はふつう右手系をとりますが、画面の奥行きを正の向きにとる都合で、コンピュータグラフィックスには左手系を使う環境もある。約束が違えば同じ式が違う結果を返すので、最初にどちらかを決めます。
外積の定義
大きさと向きを別々に決める。大きさは で、 は 2 つのベクトルのなす角です。
向きは両方に直交する側にとり、、、 がこの順に右手系をなすほうを選ぶ。直交する向きは 2 つあるので、この約束で片方に決まります。
零ベクトルが絡む場合は別に決める。
零ベクトルには向きがなく、なす角も定まりません。上の式では決まらないので、定義に含める。
大きさは平行四辺形の面積
は底辺と高さの積。底辺を と見れば、高さが にあたります。
つまり外積の大きさは、2 本が張る平行四辺形の面積です。内積が影の長さを測るのに対して、外積は面積を測る。
三角形の面積が要るなら半分にする。3 点から 2 本のベクトルを作れば、そのまま使えます。
見方を変えると、1 つのベクトルに面積と向きが詰まっている。長さが面積を、向きが平行四辺形の乗っている平面と表裏を伝えています。数だけでは表せない情報を、まとめて運ぶ形。
例:外積の大きさを求める
、、なす角が の場合を計算する。
なので、大きさは です。
同じ 2 本の内積は になる。角が小さいほど内積は大きく、外積は小さくなります。
平行なら零ベクトルになる
でも でも です。向きがそろっていても真逆でも、外積は零ベクトルになる。
とくに です。平行四辺形が潰れて面積が消える、と読める。
逆に外積が零ベクトルで、どちらの長さも でなければ 2 本は平行。平行かどうかを外積で判定できます。
内積では直交が で表されました。外積では平行が になる。ちょうど裏返しの関係。
3 点が一直線に並ぶかどうかも、これで判定できます。1 点を基準に 2 本のベクトルを作り、外積をとって零ベクトルなら並んでいる。角度を求める必要はありません。
反交換律
順番を入れ替えると符号が変わる。
大きさは で決まるので変わりません。変わるのは向きだけ。
右手の法則を 、 の順に当てると、親指は逆を向く。数の掛け算とも内積とも違って、順序が結果を左右します。

分配法則とスカラー倍
和については分配する。
左からも同じ形で、 が成り立ちます。
スカラー倍は外へ出せる。
両方の変数について線形なので、外積も双線形な演算です。この性質があるおかげで、成分に分けて計算できる。
結合法則は成り立たない
括弧の位置を変えると値が変わる。
座標軸方向の単位ベクトルで確かめる。定義から、 軸方向と 軸方向の単位ベクトルの外積は 軸方向を向き、大きさは です。
同じベクトルを 2 回並べると は零ベクトルになる。括弧の中が先に消えるからです。
ところが です。片方が零ベクトルで、もう片方はそうでないので一致しない。
括弧を省いて と書けないのはこのためです。どちらの意味かが決まらない式は、そもそも意味を持たない。
ベクトル三重積
外積を 2 回とった式は、内積を使って展開できる。
右辺は と の一次結合。 が 2 本の張る平面に垂直で、それとさらに外積をとれば平面へ戻ってくるからです。
並びから BAC-CAB の規則と呼ばれる。グラスマンの恒等式という名前もあります。
括弧が左にある形では、残るベクトルの組み合わせが変わる。

例:ベクトル三重積を展開する
と が同じで、長さが の場合を見る。
公式に当てはめると になります。 を使った。
右辺は から 方向の成分を引いた残り、つまり直交成分の符号を変えたもの。正射影の分解がそのまま現れています。
ヤコビ恒等式
3 つを巡回させて足すと消える。
ベクトル三重積の公式を 3 回使えば示せます。展開すると項が 6 つ出てきて、内積の対称性から 2 つずつ打ち消し合う。
結合法則の代わりに立つ関係。この恒等式を満たす積を持つ空間をリー代数といい、3 次元の外積はその代表例になっています。
内積との関係
大きさの二乗を書くと、内積とのつながりが見える。
ラグランジュの恒等式です。 を、内積と外積の言葉に置き換えた式にあたる。
内積は を、外積は を測ります。片方が最大のとき、もう片方は になる。2 本の関係を、そろい具合と開き具合という 2 つの面から見る形。
この式から、なす角も求まる。外積の大きさを長さの積で割れば が出るので、内積と組み合わせれば角が一意に決まります。
スカラー三重積
外積のあとに内積をとると、数が出てくる。
巡回させて入れ替えても値は変わらない。
隣り合う 2 つを入れ替えると符号が反転します。値は 3 本が張る平行六面体の符号つき体積で、 なら 3 本が同じ平面に乗っている。
3 本を並べた行列の行列式が、この値と一致する。平面での外積が符号つき面積になるのと、ちょうど同じ関係です。
3 次元でしか作れない
外積は 3 次元に固有の演算です。2 次元では、2 本に垂直な向きが平面の外へ出てしまう。
4 次元以上になると、2 本に垂直な向きが 1 つに定まらない。垂直な方向が広がりを持ってしまい、どれを選ぶかが決まりません。
大きさと向きの条件をどちらも満たす積が作れるのは、3 次元と 7 次元だけだと知られています。3 次元では符号を除いて一通りに決まる。
2 次元では、外積の代わりに数を返す量を使う。2 本が張る平行四辺形の符号つき面積で、これが 2 次の行列式にあたります。向きは正負の符号だけで足りるので、ベクトルにする必要がない。
平面のベクトルを扱うときは、 成分を として 3 次元に埋める手もあります。外積の結果は 軸方向を向き、その成分が符号つき面積になる。
鏡に映すと符号が変わる
外積は、ふつうのベクトルとは違うふるまいをする。鏡に映すと、向きが期待と逆になります。
と を鏡に映してから外積をとった結果と、 を鏡に映した結果は一致しません。符号が反対になる。
右手系が左手系に変わってしまうからです。こうしたものを擬ベクトルと呼び、速度や力のような真のベクトルと区別する。

角速度や磁束密度も擬ベクトルです。物理で向きの約束が問題になるのは、この性質が効いているため。
法線ベクトルとトルク
平面に垂直な向きが要るとき、外積が使える。平面上の 2 本をとって外積を作れば、それが法線ベクトルです。
3 点が与えられたら、差をとって 2 本のベクトルを作る。外積が零ベクトルなら、3 点は一直線に並んでいます。
力学ではトルクが です。腕と力のうち垂直な成分だけが回転に効く、という事情が に出ている。
角運動量やローレンツ力も外積で書かれます。回転や向きが絡む量に、繰り返し現れる形。
コンピュータグラフィックスでは、面の向きを法線ベクトルで持ちます。光の当たり方を計算するのに、面と光源の向きの関係が要るからです。三角形の 3 頂点から外積を作れば、その面の向きが得られる。











