アンモニアとは、窒素と水素からできる物質の一つ。常温常圧では気体である。アンモニア(NH3)は低分子の物質であり、空気より軽く、水に溶けやすく、刺激臭がする。アンモニアが水に溶けたアンモニア水溶液は塩基性をしめす。
アンモニアの性質をおおまかにまとめると次のようになる。
- 無色、刺激臭、空気より軽い
- 上方置換で捕集
- 水に溶けやすく塩基性
- 水溶液では一部がイオン化
アンモニアは空気より軽いため上方置換で集める。
注
空気より軽くても、水に溶けない物質(水素など)は水上置換で集める。「空気より軽い→上方置換」ではない。
アンモニア水溶液
アンモニアは水に溶けると
NH3 + H2O ↔ NH4+ + OH-
の反応が起きて、アンモニウムイオンと水酸化物イオンが生じるため、水溶液は塩基性をしめす。水酸化ナトリウムのように完全にイオン化するわけではなく、イオン化はほんの一部であり、水溶液は弱塩基性となる。
アンモニウムイオンはネスラー試薬で検出する。アンモニウムイオンをふくむ水溶液にネスラー試薬を少量加えると茶色の沈殿ができる。
ちなみにネスラー試薬のページにあるように、ネスラー試薬はヨウ化カリウム水溶液とヨウ化水銀(Ⅱ)水溶液の混合液である。ハロゲンを勉強したときは必ず覚えておこう。
アンモニアと金属
アンモニアは錯イオンの配位子になる。錯イオンとは、金属イオンにアンモニアなどの分子や水酸化物イオンなどのイオンが結合したイオンのこと。
その結合方法を配位結合という。配位結合は、アンモニアの非共有電子対を金属イオンとアンモニアで共有する結合である。
アンモニアが配位結合する金属イオンは次のとおり。
Zn2+
Ag+
Cu2+
Ni2+
Co2+
Co3+
アンモニアの乾燥剤
気体を捕集するときに乾燥剤をしばしば使う。乾燥剤の種類と乾燥に適さない気体まとめ(十酸化四リンやソーダ石灰など)にあるように、アンモニアの乾燥において十酸化四リンと塩化カルシウムは使用厳禁。
塩化カルシウムとアンモニアは特殊な形で反応してしまう。
ちなみに乾燥剤の種類と乾燥に適さない気体まとめは、化学の試験でとても狙われるポイントである。センター試験でも出題可能性が高いので、まだ知らない人はチェックしよう。
アンモニアの製法と化学反応
アンモニアの製造はハーバー・ボッシュ法または塩化アンモニウムと水酸化カルシウムの反応によってつくる。
ハーバー・ボッシュ法
N2 + 3H2 → 2NH3
塩化アンモニウム+水酸化カルシウム
2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2NH3 + 2H2O
ハーバー・ボッシュ法は高校化学で必ず習うが、これは現代の産業を根本的に変えた大発明と考えられている。ハーバー・ボッシュ法により化学肥料が大量生産され、農業の生産力が大幅に向上したからである。
ハーバー・ボッシュ法はハーバーとボッシュにより発明されたが、どちらもノーベル化学賞を受賞している。