労働契約関係存在確認請求事件(三菱樹脂事件)

裁判所最高裁判所 大法廷年月日1973年12月12日 判決事件番号昭和43(オ)932分類民事結果破棄差戻判例集民集27巻11号1536頁

判示事項

一 憲法第三章の自由権的基本権の保障規定が私人相互の関係に直接適用されるか(憲法の私人間効力)。二 企業者が労働者の採用にあたりその思想・信条を調査し関連事項の申告を求めること、および特定の思想・信条を理由に雇入れを拒むことの可否。三 試用期間中の留保解約権に基づく本採用拒否が許される要件。

裁判要旨

一 憲法一九条・一四条等の自由権・平等権の保障規定は、国または公共団体と個人との関係を規律するものであって、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない(間接適用説)。私人間で各人の自由・平等が対立する場合の調整は原則として私的自治に委ねられ、社会的に許容しうる限度を超える侵害に対しては民法一条・九〇条等の適切な運用によって図られる。二 企業者は経済活動の一環として契約締結の自由を有し、いかなる者をいかなる条件で雇い入れるかを法律等の特別の制限がない限り原則として自由に決定でき、特定の思想・信条を有することを理由に雇入れを拒んでも当然に違法とはならない。したがって採用にあたり労働者の思想・信条を調査し関連事項の申告を求めることも違法ではない。三 もっとも、いったん試用期間を付して雇い入れた後は雇入れの段階より広い自由は認められず、留保解約権に基づく本採用の拒否(雇入れ後の解雇にあたる)は、解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当と認められる場合にのみ許される。

参照法条

この判例を問う試験問題

全文

【主文】原判決を破棄する。本件を東京高等裁判所に差し戻す。

【理由(抜粋)】
〔憲法の私人間効力〕憲法の右各規定は、同法第三章のその他の自由権的基本権の保障規定と同じく、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。

〔雇傭の自由〕企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであつて、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないのである。

〔留保解約権〕前記留保解約権の行使は、上述した解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解するのが相当である。

〔結論〕原判決は、その余の上告理由について判断するまでもなく、破棄を免れない。そして、本件は、さらに審理する必要があるので、原審に差し戻すのが相当である。

出典 裁判所ウェブサイト 裁判例(最高裁判所 民集27巻11号1536頁)。全文は判決PDFからの抜粋、判示事項・裁判要旨は判 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51336