星までの距離 — 年周視差とパーセク、はしごの 1 段目

近い星は 1 年かけて往復して見える

地球は 1 年で太陽のまわりを 1 周するので、見る場所が軌道の幅のぶんだけ動きます。離れた 2 か所から見ると、近いものは違う方向に見えます。指を立てて右目と左目で交互に見るのと同じことです。

遠くの星を背景にすると、近い星は 1 年かけて小さな楕円を描き、元の位置へ戻ります。近い星ほど、この見かけの振れは大きくなります。

この振れの半分を角度で測ったものを年周視差といい、 と書きます。星の側から地球の軌道の半径を見込んだ角、と言い換えてもかまいません。

背景の星が動かないのは、軌道の幅が問題にならないほど遠いからです。同じ視野の中で、動くものと動かないものがある。それがそのまま測定になっています。

視差から距離が出る

太陽と地球と星で、細長い三角形ができます。角がとても小さいので、距離は視差に反比例します。

視差が 秒角になる距離を単位に取り、 パーセクと決めます。 を秒角、 をパーセクで測れば、 です。

視差が 秒角なら パーセク、 秒角なら パーセクです。角が半分になれば距離は 2 倍になります。

パーセクは 光年ほどです。この測定に合わせて作った単位なので、式に余計なものが出てきません。

視差はどれも 1 秒角より小さい

秒角は 度の です。満月の見かけの大きさが 度、つまり 秒角なので、 秒角は満月の ほどにあたります。

いちばん近いケンタウルス座の星でも、視差は 秒角しかありません。どの星の視差も 秒角より小さく、例外はありません。

測れるようになるまで長くかかったのは、このためです。コペルニクスが地球は動くと言ったとき、星の振れが見つからないことが反対の理由に挙げられました。角が小さすぎて届かなかっただけでした。

最初に測れたのは 1838 年です。装置が 秒角より下へ届いたことと、地球が動いていることが空に現れたことが、同時に起きました。

距離が見かけの明るさを光度に変える

届く光は距離の 2 乗で減ります。これを裏返せば、見かけの明るさに距離の 2 乗を掛けたものが、実際に出している量、つまり光度 になります。

同じ明るさに見える 2 つの星が、まったく違うものであることがあります。片方が 倍遠ければ、出している光は 倍です。

空での明るさが、それだけでは何も言わないのはこのためです。先に距離が要り、そこではじめて星そのものが見えてきます。

HR 図の縦軸はこの光度です。あの図に打たれている星は、どれも先に距離が測られています。

HR 図が測定を先へ伸ばす

視差には限りがあります。遠いほど角は小さくなり、やがて装置の誤差に埋もれます。その先は別のやり方で届かせるしかありません。

そこを担うのが HR 図です。星の光を分ければ表面温度が分かり、主系列のどこにいるかが決まり、光度が分かります。

光度が分かれば、見かけの明るさと比べて逆 2 乗から距離が出ます。これを分光視差といいます。名前に視差とありますが、角は測っていません。

視差が 1 段目、HR 図が 2 段目で、上の段は下の段で目盛を合わせます。遠い宇宙を測る仕事は、こうした段の積み重ねでできていて、その始まりがここです。