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English

落ちる距離は時間の 2 乗で伸びる(自由落下と重力加速度 g の式)

手に持ったボールを静かに離すと、速さが一定の割合で増えていきます。 秒ごとに増える速さが重力加速度で、記号は を使う。

地表付近では、およそ です。 秒たつごとに速さが ずつ上乗せされていく。

秒後は
秒後は
秒後は
秒後は

投げ下ろしたわけではないので、離した瞬間の速さは です。そこから毎秒 ずつ増えるだけの、単純な等加速度運動になる。

標準重力加速度という決めた値

は測って得た値で、場所によって違う。国際的な基準としては、次の値が定められている。

この数字は 年の第 回国際度量衡総会が採択したものです[1]。緯度 度の海面での自由落下をもとにしている。

高校物理では に丸めて使う。有効数字 桁の計算なら、それで十分な精度が出る。

g は場所によって変わる

地球は完全な球ではなく、しかも自転している。そのため の値は場所ごとに違う[2]

赤道と極

赤道ではおよそ 、極ではおよそ 。自転による遠心力と、地球のふくらみの両方が効いて、極のほうが パーセントほど大きい

いちばん小さい場所

ペルーのネバド・ワスカラン山で 。赤道に近く、標高も高いという条件が重なっている

いちばん大きい場所

北極海の海面で 。地表での差は全体で パーセントほどに収まる

高いところへ行くほど小さくなります。海面から 上がると、およそ パーセント減る。

国際宇宙ステーションの高度 でも、地表の パーセント近くが残っています。宇宙飛行士が浮いて見えるのは、重力が消えたからではない。ステーションごと落ち続けているから。

1604
ガリレオの落体の法則

真空中ではどんな物体も同じ速さで落ちるという結論。重い物体ほど速く落ちるとしたアリストテレスの説を覆した。

1901
標準重力加速度の決定

回国際度量衡総会が を採択。基準となる値が国際的に固定された。

速度の公式

加速度が一定なので、速さは時間に比例して増える。

初速度が の場合の式です。 秒後の速さは、 を掛けるだけで求まる。

グラフに描けば原点を通る直線になる。傾きが そのもの。

例:落としてから 3 秒後の速さ

時速に直すとおよそ です。 秒でこの速さに達する。

秒後なら になります。空気の抵抗がなければ、という条件つきの値。

速度と時間のグラフでは面積が距離

速さが変わらない運動では、進んだ距離は速さと時間の積です。速度と時間のグラフで言えば、長方形の面積にあたる。

速さが変わる場合も同じことが成り立ちます。グラフの下の面積が、そのまま進んだ距離になる。

自由落下のグラフは直線なので、面積は三角形です。底辺が時間 、高さが速さ

距離の公式

三角形の面積は、底辺と高さを掛けて で割ったものです。

落ちた距離は時間の 乗に比例する。時間が 倍なら距離は 倍になる。

速さが時間に比例して増えるため、後半ほど稼ぐ距離が伸びるという事情です。

例:3 秒で落ちる距離

秒間では 秒間では です。 秒ごとに落ちる距離は と増えていく。

差が ずつ広がっている点が、 乗の効き方をよく表している。

時間を消した式

から とし、これを に代入する。

整理すると、時間の出てこない関係が得られる。

高さがわかっていて時間がわからない問題では、この形がいちばん早い。落下時間を経由せずに速さが出ます。

例:20 m の高さから落とす

時速でおよそ です。ビルの 階ほどの高さで、この速さに達する。

高さを 倍の にしても、速さは 倍にしかなりません。速さが高さの平方根に比例するため。

落下時間の求め方

について解くと、落下時間が出る。

こちらも平方根です。高さを 倍にしても、かかる時間は 倍にとどまる。

なら になります。

質量が出てこない理由

これまでの式に質量が一度も現れていません。軽い物体も重い物体も、同じ速さで落ちる。

理由は運動方程式にある。重力の大きさは で質量に比例しますが、動かしにくさもまた質量に比例する。

両辺の が消えて、加速度が だけで決まる。ガリレオが 年に到達した結論で、重い物体ほど速く落ちるとしたアリストテレスの説を覆しました。

重力の大きさを決める質量と、動かしにくさを決める質量は、本来は別の概念です。この つが厳密に等しいという事実を等価原理といい、一般相対性理論の出発点になった。

重力を生む質量と慣性を生む質量が一致するという原理。落下が物体によらないという観測事実が、そのもとになっている。

初速度があるとき

投げ下ろしたり投げ上げたりした場合は、初速度 を足すだけです。上向きを正にとると、次の形になる。

負号は、重力が下向きに働くことを表している。投げ下ろす場合は を負にとればよい。

時間を消した式も同じように書けます。

例:真上に投げ上げる

で真上に投げます。最高点では速さが になる。

そのときの高さは から求まる。

落ちてくるのにも 秒かかり、戻ってきたときの速さは です。上りと下りが時間も速さも対称になる。

空気の抵抗があると終端速度に達する

実際の落下では、空気の抵抗が働きます。速さが増えるほど抵抗も増え、やがて重力と釣り合う。

釣り合った時点で加速度が になり、速さはそれ以上増えません。この一定の速さを終端速度といいます。

終端速度は物体によって違う。重さと断面積の比で決まるため、羽根は遅く、鉄球は速く落ちます。

真空にすれば差は消えます。羽根と鉄球を真空管の中で同時に落とすと、同じ速さで底に着く。

高さ から静かに落とした物体の落下時間を とします。高さを にすると落下時間はどうなりますか。

  • 倍になる
  • 倍になる
  • 変わらない
  • 倍になる
__RESULT__

で、高さは平方根の中にあります。 倍にすると平方根がかかって 倍。着地の速さも同じ理由で 倍になります。

例:落下時間から高さを測る

井戸に石を落として、水面に届くまでの時間を測る方法があります。 秒かかったとする。

音が戻ってくる時間を含めると、実際にはもう少し浅くなります。音速 を戻るのに 秒ほどかかる。

精度を上げたいなら、この往復を式に組み込む必要がある。落下の時間と音の時間の和が 秒になるように解きます。

出典

Declaration 2 of the 3rd CGPM (1901). Bureau International des Poids et Mesures.
Christian Hirt ほか. *New ultrahigh-resolution picture of Earth's gravity field*. Geophysical Research Letters 40, 2013.
手を離したボールは $1$ 秒ごとに $9.8\ \mathrm{m/s}$ ずつ速くなり、落ちた距離は $4.9$、$19.6$、$44.1\ \mathrm{m}$ と伸びます。$v = gt$ のグラフの下の三角形が距離にあたるので、$y = \dfrac{1}{2}gt^2$ になる。時間を消すと $v^2 = 2gy$ で、$20\ \mathrm{m}$ からなら $19.8\ \mathrm{m/s}$。高さを $4$ 倍にしても速さは $2$ 倍にとどまります。式に質量が出てこないのは、重力も動かしにくさも質量に比例して打ち消し合うため。$9.80665$ という基準値の由来、地表でも $0.7$ パーセントほど違う理由、井戸の深さを落下時間から測るときの音の補正まで。