「解析概論(高木貞治著)」は微分積分の専門書です。微分積分を一から説明しているように見えますが、イプシロンデルタ論法などの数学独自の考え方に精通していないとまったく歯が立たない。「よし、微分積分をきちんと一から勉強しよう!」と考えて、安易に本書に手を伸ばすと痛い目にあいます。
項目 | 評価 |
---|---|
使いやすさ | ★★★ |
詳しさ | ★★★★★ |
おすすめ | ★★★ |
レベル | 超上級 |
対象 | 大学四年生~ |
数学科以外の人にはおすすめできない
「解析概論」は微分積分を代表する本としてかなり有名ですが、数学科以外の人にはまったくおすすめできない。
本書は微分積分を一から説明しています。実数の定義(デデキント切断など)から始まっているのもそのためです。しかし最初の数ページだけでも理解できる大学一年生がどれだけいるか疑問です。
微分積分の効率的な勉強は微分積分の計算に慣れることです。イプシロンデルタ論法から入り厳密な理論に走ってしまうと、いつまでたっても偏微分の計算問題は解けるようにならない。
また微分積分は基本的に利用されるものです。物理や化学や経済に使われるものです。そしてそれらの学問は「解析概論」が用意する厳密な理論をそこまで要求しません。
数学科以外の方は「微分積分はこんなふうに成り立っているのか、計算はだいたいこんなふうに解くのか」という理解で十分です。
単に微分積分を勉強したいという方はマセマのキャンパスゼミシリーズなどをおすすめします。
数学科の方は軽く読むといいかもしれない
数学科の方は微分積分の基本を知る意味で軽く読むといいかもしれません。
昔風の専門書で最近の専門書に慣れている方はかなり戸惑うと思いますが、そうでなければ自分が苦手とするポイントをかいつまむように読むと得るものは大きいでしょう。
「解析概論」は順番に読んでいると日が暮れます。これだけを読んでもおそらく三ヶ月はかかるでしょう。
辞書的に使うといいですね。