2×2 行列(2 次正方行列)の和と積|足し算・かけ算・スカラー倍の計算
行列は数を長方形に並べたものです。横の並びを行、縦の並びを列という。
この は行が 2 本、列が 2 本なので 2 次正方行列と呼ぶ。並んでいる 1 つ 1 つの数が成分です。
行列どうしの足し算と引き算は、同じ位置の成分をそのまま計算するだけです。ところが掛け算は事情が違い、行と列を向き合わせて作る。この差が行列の計算のいちばんの特徴になっている。
素直に見えるのは足し算のほうですが、行列が道具として役に立つのは掛け算があるからです。形が変わっているのは偶然ではなく、行列がベクトルを移す仕組みがそのまま表れている。

行と列と成分
成分の位置は、行の番号と列の番号の組で指す。 行 列にある成分を と書きます。
行が先、列が後という順番。 は 1 行目の 2 列目にある成分で、 とは別のものになります。
さきほどの なら 、、、 です。行を左から右へ読んでいき、読み終えたら次の行へ移る。
この順番は最後まで変わらない。逆行列でも行列式でも、添字の 1 つ目は行、2 つ目は列です。
行と列のどちらが横でどちらが縦かは、単なる決めごと。漢字の形から、行は横棒が重なった形、列は縦に切り分ける形と結びつける覚え方が使われる。
2 次正方行列
行の数と列の数が等しい行列を正方行列という。2 行 2 列なら 2 次正方行列です。
行と列の本数の組を型と呼ぶ。2 行 3 列なら 型で、この形は正方行列になりません。
この記事では 2 次正方行列だけを扱います。行と列の本数が違う行列にも積は定義できるが、掛けられる型の組み合わせに条件が付く。
正方行列に話を絞るのは、都合のよい性質がそろっているからです。同じ型どうしなので足し算も掛け算も常にでき、掛けた結果も同じ型で戻ってくる。
行列が等しいということ
2 つの行列が等しいのは、型が同じで、対応する成分がすべて等しいときです。
この 1 本の式は、、、、 という 4 本の等式をまとめたもの。
行列の等式は、成分の数だけ等式を抱えている。この見方は、連立方程式を行列 1 本で書くときにそのまま効いてきます。
和と差
型が同じ行列どうしは足せる。同じ位置の成分を足すだけです。
差も同じ要領で、同じ位置の成分を引く。位置がずれた成分どうしを組み合わせることはありません。
型が違えば足せません。2 行 2 列と 2 行 3 列の和は、そもそも定義されていない。
成分の位置には意味がある。 成分どうし、 成分どうしが対応する相手で、この対応が付かない相手とは足せません。型がそろっているというのは、対応が付くための条件。

例:和を計算する
数を入れて確かめる。
成分は 、 成分は です。残りの 2 つも同じ調子で埋まる。
考えることは何もない。4 か所で数の足し算をしているだけです。
例:差を計算する
引き算も位置ごとに進める。
左上から順に 、、、 です。
引く順を入れ替えると、すべての成分の符号が変わる。数の引き算と同じで、行列でも順序は結果を変えます。
スカラー倍
数を掛けるときは、すべての成分に掛ける。
このときの をスカラーと呼ぶ。行列と区別するための言い方です。行列そのものを掛ける話とは別ものになる。
を掛ければ全部の符号が反転する。差はこれを使って と書き直せるので、引き算を独立した演算と見る必要はありません。
例:スカラー倍を計算する
を掛けてみます。
負の成分にも にも、同じように掛ける。 に掛けた結果は のままです。
一部の成分だけに掛ける、という操作ではありません。行や列を選んで定数倍するのは、基本変形という別の話になる。
零行列
成分がすべて の行列を零行列といい、 と書く。
どの行列に足しても相手は変わらない。 が成り立ち、数の と同じ役どころです。
にもなる。同じ成分どうしが引き算で消えるからです。
零行列は掛け算でも のようにふるまい、 です。ただし積が でも両方が とはかぎらない。この点だけは数と違う。
和について成り立つ法則
足す順番は入れ替えられる。
3 つ以上の和では、どこから足しても同じ結果です。成分ごとに数の足し算をしているだけなので、数の法則がそのまま移る。
スカラー倍も分配する。 と が、どちらも成り立ちます。
和については、数の計算と同じ感覚で進められる。事情が変わるのは積のほうです。
積の作り方
積は成分ごとではありません。左の行と右の列を向き合わせ、掛けて足したものが成分。
成分は左の 1 行目と右の 1 列目から作る。 成分なら、左の 1 行目と右の 2 列目です。
行の番号は左の行列から、列の番号は右の行列から来る。掛け算の記号は、数のときと同じように省きます。
左の行と右の列の内積、とも言いかえられます。行と列をそれぞれベクトルと見れば、成分の積を足した形そのものだからです。
2 次なら成分が 4 つあり、それぞれに 2 つの積と 1 つの和が要る。掛け算は 8 回、足し算は 4 回です。足し算が 4 回で済むのに比べると、手間はかなり増える。
行がいくつあっても、列がいくつあっても、作り方は変わらない。左の 行目と右の 列目から 成分を作る、という規則だけ。
例:積を計算する
数を入れて 4 つの成分を順に作る。
成分は 、 成分は です。
2 行目も同じで、 成分が 、 成分が になる。
例:負の数が混じる積
符号が入っても手順は変わらない。
成分は です。負どうしの積が正になるところでとり違えやすい。
成分は になる。括弧を付けたまま計算すると符号を落としにくくなります。
単位行列
対角に が並び、ほかが の行列を単位行列といい、 と書く。
どちらから掛けても相手は変わらない。
数の と同じ役どころです。積について順序が問題にならない、数少ない相手でもある。
対角に並ぶ成分を対角成分という。単位行列は対角成分がすべて で、それ以外が の行列です。 を全部の成分に置いたものではありません。
相手が変わらない理由は、成分を作る式に出ている。 を掛けた項が消えるので、対角の が拾った成分だけが残ります。

例:単位行列を掛ける
実際に計算して確かめる。
成分は です。ほかの成分も、対角の が拾った値がそのまま出てくる。
右から掛けても同じ結果になる。単位行列だけは、どちらから掛けるかを気にせずに済みます。
順序を変えると値が変わる
積では、掛ける順番が結果を変える。
数の掛け算とも、行列の足し算とも違うところです。 と書いてあるものを に読み替えることはできない。
型が同じでも起きる。2 次正方行列どうしなら も もどちらも計算できますが、値はまず一致しません。
一致する組もある。単位行列や零行列が相手のとき、同じ行列どうしのとき、逆行列どうしのときです。こうした組を可換であるという。
たまたま一致した組があっても、いつでも入れ替えられるわけではない。等式を変形するときは、左から掛けるのか右から掛けるのかで結果が変わります。

例:順序を入れ替えて確かめる
次の 2 つで両方の順序を計算する。
を作ると 成分が になる。
が現れる位置が左上と右下で入れ替わっている。成分の顔ぶれは同じでも、並びが違えば別の行列です。











