外積の成分表示(基底ベクトルの外積から組み立てる)
、 の外積は、成分で次のように書ける[1]。
添字が と巡回している。この形は覚えるものではなく、基底ベクトルの外積から出てくるものである。
9 項に開いて 3 項が消え、残った 6 項が 3 つの組にまとまる。それだけの計算で導ける。
基底ベクトルどうしの外積
外積は幾何で定義される。大きさが 、向きは両方に直交し、右手系になる向きである[2]。
右手系の座標では 、、 が互いに直交し、長さが 。この定義から次が出る。
添字が巡回している。 の順に並べれば、どこから始めても同じ形になる。
順番を入れ替えると符号が変わる。 である[1]。
同じもの同士は になる。 で だからで、。
9 項に開く
外積は 2 つの変数のどちらについても線形である。だから括弧を普通に展開できる[1]。
個の項が出る。係数はスカラーなので外へ出し、基底ベクトルどうしの外積だけを残す。
対角にあたる 3 項は、同じ基底ベクトルどうしなので 。9 項のうち 3 項が消える。
6 項をまとめる
残った 6 項に、巡回の公式と符号の規則を当てる。
の係数には添字 と が、 には と が、 には と が現れる。
各成分で「自分以外の 2 つが巡回の順に並ぶ」という形になった。基底の外積が巡回していたことが、そのまま成分に写っている。
行列式の形で書く
同じ式を、第 1 行に基底ベクトルを置いた 次の行列式として書ける[1]。
第 1 行で余因子展開すると、上の 3 つの成分がそのまま出る。ベクトルを成分に混ぜた形なので、厳密には行列式ではない。覚えるための書き方である。
この形にすると、性質がすぐ読める。 と を入れ替えるのは 2 行の入れ替えなので符号が反転する。同じベクトルなら 2 行が等しく、値は 。

例:成分で計算する
、 とする。式に入れるだけである。
直交を確かめる。、。
どちらも になった。定義の「両方に直交」が、成分の式でも成り立っている。
直交することの証明
一般に成り立つことも式で言える。 を書き下す。
と 、 と 、 と が対で現れる。全部で 。
行列式の形で見れば一瞬である。 は、第 1 行を に置き換えた行列式にあたる[1]。第 1 行と第 2 行が等しいので になる。
2 行が等しい行列式は 0
だから a と外積の内積は 0
外積は両方に直交する
大きさは平行四辺形の面積
外積の長さは、2 本が張る平行四辺形の面積に等しい[1,2]。成分から確かめられる。
ラグランジュの恒等式と呼ぶ。両辺を展開すると、同じ 9 項が並ぶ。
を代入して整理すると、次の形になる。
は、底辺 、高さ の平行四辺形の面積そのもの。
上の例で確かめる。 である。
右辺は で、。引くと で一致する。
例:面積と体積を出す
、 が張る平行四辺形の面積を求める。
外積は で、長さは 。底辺 、高さ の平行四辺形にあたる。
3 本なら体積が出る。 の絶対値が、平行六面体の体積になる[1]。
、、 をとる。
なので、内積は 。体積は絶対値をとって である。
記号でまとめる
3 つの添字を持つ記号を用意すると、成分の式が 1 行になる[3]。
レヴィ・チヴィタ記号と呼ぶ。 個の成分のうち、 でないのは 個だけである[3]。
2 つの添字を入れ替えると符号が変わる、という性質がそのまま外積の反対称性になる。巡回で不変なことが、基底の外積の巡回に対応する。
成分の式に現れる符号は、すべて 置換の偶奇 から来ている。
行列式の定義に出てくる符号と同じもの。外積と行列式が似た形をしているのは偶然ではない。
3 次元でしか作れない
2 本のベクトルに直交する方向を 1 つに決める、という操作は 次元に特有である。
次元で一次独立な 2 本をとると、両方に直交するベクトル全体は 次元の空間になる。この次元が になるのは のときだけ。
次元では 次元、つまり零ベクトルしかない。 次元では 次元ぶんの自由度が残り、向きが 1 つに決まらない。
だから外積は 次元の話として語られる。他の次元へ持っていくなら、別の道具に置き換えることになる。
はどれですか。
面積との関係も確かめる。
、、 のとき、 はいくらですか。
ラグランジュの恒等式から です。 は 、つまり直交する場合の値で、内積が でないぶん小さくなります。
検算のしかた
出した外積と、もとの 2 本それぞれとの内積をとる。どちらも にならなければ、符号か添字を間違えている。
なら、 で通る。
順番を入れ替えて計算し、符号だけが反転するかを見る方法もある。 になれば、反対称性が保たれている。
大きさをラグランジュの恒等式で確かめるのが 3 つ目。 と一致すれば、成分の符号が正しい。
基底の外積が巡回すること。両方の変数について線形なこと。この 2 つだけで、成分表示は導ける。












巡回の順は 1→2→3→1 なので、正の形は e2×e3=e1 です。順番が逆なので符号が反転して −e1 になります。同じ基底どうしでないので 0 にはなりません。