まず太陽系で考えます。質量のほとんどは太陽 1 つに集まっていて、惑星の重さは無視してかまいません。
半径 の円軌道を回るには、中心向きの力が だけ要ります。それを出しているのは万有引力 です。等しいと置いて を約分すると、 が残ります。
が分母の根号の中にいます。ですから遠い惑星ほど遅い。海王星は地球よりずっとゆっくり回っています。 が で落ちていくこの下がり方を、ケプラー回転といいます。
ここで効いているのは、中心の外側に質量がないことです。中に入っている質量 が によらず一定だから、 は だけで決まります。
同じことを渦巻銀河でやってみます。銀河の光は中心に強く集まっているので、質量も中心寄りだと思うのが自然です。だとすれば、外側の星はケプラー回転で遅くなるはずです。
測り方はスペクトルです。円盤の片側は近づき、反対側は遠ざかるので、同じ輝線が片側で青く、片側で赤くずれます。そのずれの大きさが、その半径での回転の速さです。
ところが測ってみると、 は下がりませんでした。中心の近くで立ち上がったあと、外へ行ってもほとんど平らなまま続きます。図の点が観測、薄い曲線がケプラー回転の予想です。
銀河の光が見えなくなるところまで測っても、まだ平らです。予想と観測が、外へ行くほど大きく食い違っていきます。
食い違いをどう読むか。 の は、半径 の内側に入っている質量です。太陽系ではこれが一定でしたが、銀河では中心の外にも星がいるので、 とともに増えます。
では、光っているものを数え上げて を組み立ててみます。星の数もガスの量も、外へ行くほど急に減ります。だから は途中で頭打ちになり、そこから先はほとんど増えません。
頭打ちになった を式に入れると、そこから外側は が一定と同じことになり、 は で落ちていきます。これがさっきの薄い曲線です。
図で 2 本のあいだを塗ったところが、足りていない分です。外へ行くほど広がります。
が平らだということを、そのまま式に読み直します。 が一定なら ですから、 は に比例して増え続けなければなりません。
つまり、光が見えなくなった外側にも、質量が同じ割合で足されていることになります。星でもガスでもない、光らない何かが、円盤をはるかに超えて球状に広がっている。これを暗黒物質のハローといいます。
図の 2 本が、その言い分です。光るものから積み上げた質量は途中で寝てしまいますが、平らな回転曲線が要求する質量は、まっすぐ伸び続けます。
この食い違いは、1 つの銀河のくせではありません。測った渦巻銀河のほとんどで同じことが起きます。次の記事では、銀河団という、もっと大きな集まりで同じ問いを立て直します。