高校倫理ノート
14 Sep 2024 25 Nov 2015

古代日本のアニミズムと神道、柳田国男や和辻哲郎などの思想|高校倫理

古代日本にも宗教的なものがありました。それがアニミズム(精霊信仰)と神道です。アニミズムと神道は深くつながっており、区別することはできません。

アニミズム…自然の様々に対して畏怖し、信仰すること

アニミズムでは、山や木や石になにかが宿っていると考えます。神社に御神木と呼ばれる注連縄が結ばれた木を見かけたら、それはアニミズムの名残りです。神社は日本の神道を具現化した建物といえます。

日本のアニミズムにおいて神は八百万神(やおよろずのかみ)です。神がたくさんいるという点でキリスト教などと異なります。八百万神は自然のあらゆるものに宿り、古くからその地にある木や石などはしばしば神が宿っているとして信仰の対象になっていました。

和辻哲郎、柳田国男、折口信夫

和辻哲郎、柳田国男、折口信夫の三人はごちゃごちゃになりやすいですが、「日本において神とはなにか?」を丹念に調べた人物は柳田国男と折口信夫です。

柳田国男は神を祖先、折口信夫は神をまれびと(村や共同体に外からやってくる訪問者または旅人)としました。「山にとどまって…」という表現が出てきたら柳田国男、「まれびと」が出てきたら折口信夫。

和辻哲郎は神というより風土に関する著述が有名で

砂漠型風土 … 戦闘的思考
牧場型風土 … 論理的思考
モンスーン型風土 … 汎神論的思考

と風土と民族的思想をつなげましたが、他にもアマテラスについて「アマテラスは祀られる神であり、祀る神である」という論も唱えています。

汎神論とは、神と自然を一体に考える思想のこと。砂漠型風土はアフリカや西アジア、牧場型風土はヨーロッパ、モンスーン型風土はアジアに多い気候です。

センター試験過去問(2016 年・第三問・問 2)

日本の神についての和辻哲郎の考えとして最も適切なものを選べ。

  1. 天皇は神聖にして侵すことのできない神であるから、忠孝一本という道徳に基いて天皇に奉仕するのが日本人の責務である。
  2. 人は死後に遠い彼方の世界に行くのではなく、身近な山などに留まって、子孫を見守る神となり、定期的に子孫のもとを訪れ、豊穣をもたらす。
  3. 神とは、共同体の外部から来訪し人々の饗応を受けて去る存在であり、その様を模倣することで各種の芸能が成立した。
  4. 日本神話には唯一絶対の究極神は存在せず、最も尊貴な神として祀られるアマテラスであっても、みずから他の神を祀っている。

解答

4 が正しい。

センター試験の倫理において和辻哲郎とその思想はよく出る人物。この問題は和辻哲郎、柳田国男、折口信夫の三人の違いをきちんと理解しているかを試しています。

  • 和辻哲郎 … 風土、アマテラス
  • 柳田国男 … 山にとどまる祖先神
  • 折口信夫 … まれびととしての神

1 は誤りで、水戸学派の考え方。

センター試験過去問(2023 年・第二問・問 2)改題

日本の神々の説明として最も適当な説明を選びなさい。

  1. 『古事記』によれば、イザナキとイザナミは日本の国土を生むに当たって、より上位の神の意向を問うたが、その命令に反発して従わなかった。
  2. 日本の神話における「天つ神」は、最上位の人格神であるため、全てを自分自身の判断で決定した。
  3. より上位の神に奉仕し、その神意を問うアマテラスを、和辻哲郎は「肥るとともに祀られる神」と規定し、その尊貴さを否定した。
  4. 日本神話に登場するスサノヲは、アマテラスに心の純粋さを問われ、自分に清き明き心があるのを示すことに成功した。

解答

4 が正解。スサノヲは黄泉の国に行く前、アマテラスに清き明き心を証明しました。これは「うけい」と言われます。

1 は誤り。イザナギとイザナミは神々の命を受けて国を生んだとされています(国生み)。日本神話を構成する「国生み」は古事記にあります。

3 は誤り。和辻哲郎は「尊貴さを否定し」ていません。

稲荷神社(高校倫理範囲外)

アニミズムは自然のあらゆるものを祀りますが、その中に狐があります。稲荷神社は稲荷神という神を祀りますが、古来から稲荷神と狐はしばしば同一視されてきました。そのため稲荷神社には狐の像が今も立っています。

稲荷神社の総本社がテレビでもよく映る伏見稲荷大社です。赤い鳥居がたくさん並んでおり、京都の観光スポットとなっています。

いろいろな神社(高校倫理範囲外)

神社名 信仰対象
伊勢神社 天照大神
豊受大神
日吉神社 天照大神
八幡神社 八幡大神
浅間神社 富士山
稲荷神社 稲荷(狐)
天満神社 菅原道真
北野神社 菅原道真
天神神社 菅原道真

信仰対象によって神社の名前が異なります。