まず分子 1 個を見ます。壁にななめから当たって跳ね返るとき、向きが変わるのは壁に垂直な速度だけです。壁に沿った速度はそのまま通り過ぎます。ですから壁との衝突は、いつでも垂直な成分だけの話になります。
垂直な成分を とすると、跳ね返ったあとは です。運動量は から へ変わるので、変化の大きさは です。分子が失ったぶんはそのまま壁が受け取るので、壁は 1 回の衝突で の力積を受けます。
速さが 2 倍になれば、1 回に渡る力積も 2 倍です。速い分子は強く叩く、というだけのことですが、あとで速さの 2 乗が出てくる理由の半分がこれです。
ただし 1 回の衝突は瞬間の突きなので、これだけでは圧力になりません。圧力は押し続ける力ですから、時間あたりに何回叩くのかを数える必要があります。
同じ分子が次にこの壁を叩くのは、向かいの壁まで行って戻ってきたときです。箱の幅を とすると往復の道のりは なので、かかる時間は です。1 秒あたりに叩く回数はその逆数で、 になります。
速さが 2 倍になれば、この回数も 2 倍です。1 回の力積 と 1 秒あたりの回数 を掛けると、1 個の分子が 1 秒で壁へ渡す力積は になります。力積を時間で割ったものが力なので、これが 1 個ぶんの平均の力です。
速さが 2 乗で効くのは、勢いにも回数にも速さが入っているからです。どちらか片方だけなら 1 乗で済みました。
分子は 個あり、速さはそれぞれ違います。全部を足すには 2 乗の平均をとります。平均は山かっこで囲んで と書く決まりにすると、壁が受ける力は です。分子を増やせば、そのぶん力も増えます。
実際の衝突はばらばらの時刻に起きるので、ある瞬間の力は激しく揺れます。誰も当たっていない瞬間の力は 0 で、当たった瞬間だけ跳ね上がります。
それを時間でならすと、一定の値に落ち着きます。分子が多いほど、ならした値はなめらかになります。私たちが圧力と呼んでいるのは、この平均のほうです。
力を壁の面積 で割ると圧力 になります。同じ力でも受ける面が広ければ、圧力は小さくなります。
盤面の「圧力(実測)」は、まさにこの手順で出しています。壁が受け取った力積を貯めてならし、壁の長さで割っています。理論の帯とぴたりと重なるのは、同じものを別の道から数えているだけだからです。
分子はどの向きへも同じように飛んでいるので、3 つの向きの 2 乗の平均は等しくなります。ですから です。
これを力の式へ入れ、両辺に体積 を掛けると になります。右辺に残っているのは分子の質量と速さだけです。
あとは速さと温度をつなぐだけです。 を使えば が出ます。状態方程式は、分子が壁を叩いているという絵から出てくる式です。
体積を半分にすると往復が短くなって叩く回数が 2 倍になり、圧力も 2 倍になります。これがボイルの法則です。温度を上げれば 1 回の勢いと回数の両方が増えるので、やはり圧力は上がります。盤面でピストンや温度を動かしたときに帯が動くのは、このどちらかが起きているからです。
なお盤面は 2 次元なので、向きは 2 つしかありません。3 で割るところが 2 で割るに変わるだけで、組み立ては何も変わりません。