温度が決めているのは速さの平均です。1 個 1 個の速さはそろっていません。
分子を速さで数え上げて棒に積むと、山の形になります。盤面の分子の色は速さなので、青い分子と赤い分子が同時に混ざっていることが、そのままこのばらつきです。
実際の気体では分子どうしもぶつかるので、1 個ずつの速さは絶えず入れ替わります。それでも全体の分布は動きません。1 個の速さは決まらないのに集まりの形は決まる、というのが平衡です。
棒は分子 1 個ずつを数えたものなので、数が少ないとぎざぎざになります。数を増やすほど、なめらかな曲線へ近づきます。
曲線には決まった形があります。盤面は 2 次元なので で、 は速度の 1 成分の標準偏差です。教科書の気体は 3 次元なので ではなく が前に付いた形になりますが、山ができる理由はどちらも同じです。
速さ 0 のところで曲線が 0 になるのは、 の成分と の成分が同時にちょうど 0 になる分子がめったにないからです。止まっている分子はほとんどありません。
右へ行くほど下がるのは の効きです。速さが増えるほど、そういう速度をもつ確率は急に小さくなります。それでも 0 にはならないので、裾はどこまでも続きます。飛び抜けて速い分子は、わずかにいます。
山の頂は にきます。盤面はこの頂の高さで縦軸を取っているので、温度を変えても山が枠から出ません。
代表的な速さは 3 つあり、どれも違う値になります。いちばん数が多い最頻の速さ、そのまま足して割った平均の速さ、そして 2 乗して平均してから平方根をとった二乗平均平方根です。
2 次元の盤面では、順に 、、 です。比にすると 1.00・1.25・1.41 で、盤面の読み取りに出ている 3 つの数がこれです。
二乗平均平方根がいちばん大きいのは、2 乗すると速い分子が重く効くからです。速さが 2 倍の分子 1 個は、平均に 4 個ぶんの重みで入ります。
温度とつながるのは、この二乗平均平方根です。運動エネルギーは速さの 2 乗で決まるので、平均をとる前に 2 乗しておかなければ温度の話になりません。最頻の速さや平均の速さを、そのまま温度に置き換えることはできません。
温度を上げると が で伸びるので、山は右へ動きます。
同時に山は低く平たくなります。分子の数は変わっていないので、曲線の下の面積は同じままです。右へ広がったぶんだけ、高さを譲ることになります。
いちばん大きく変わるのは裾です。平均が少し上がるだけで、飛び抜けて速い分子の数は何倍にもなります。化学反応が温度に敏感なのはこれで、反応できるのは裾にいる分子だけだからです。
盤面では横軸の目盛りを温度で変えていません。温めたときに山がそのまま右へ流れていくのが見えるのは、そのためです。