紀元前8世紀頃、ホメロスやヘシオドスなどの詩人がギリシア神話の世界を詩にした。ホメロスは「イリアス」「オデュッセイア」、ヘシオドスは「神統記」「仕事と日」を著した。
数百年後に現れたタレスやピタゴラスなどの自然哲学者と違い、当時の文化人は自然や物事を神話と結びつけて考えた。
その後、紀元前500年頃になるとギリシアや現在のトルコ付近のイオニアに自然哲学という思想が生まれた。
タレスなどの学者は理性(ロゴス)をもちいて自然を観察し、万物の根源(アルケー)を考察した。例えばデモクリトスは、それ以上細かくできないもの(アトム)が何もない空間(ケノン)で運動すると考えた。
哲学者 | アルケー |
---|---|
タレス | 水 |
アナクシメネス | 空気 |
アナクシマンドロス | アペイロン |
デモクリトス | アトム |
ヘラクレイトス | 火 |
エンペドクレス | 火、水、土、空気 |
ピタゴラス | 数 |
タレス、アナクシメネス、アナクシマンドロスの三人をミレトス学派という。ミレトスはイオニアの一地域。アナクシマンドロスのアペイロンは限定されないものという意味である。タレスは日食を予言した学者でもある。アルケーを火と考えたヘラクレイトスは「万物は流転する」と述べ、世界は常に変化するとした。
ピタゴラスは魂(プシュケー)と輪廻について考えた。魂は肉体に束縛され、死後も別の肉体に移る。輪廻は罰であり、数を研究することで魂は肉体から解放され、浄化(カタルシス)されると説いた。ピタゴラス学派は三平方の定理などの科学的功績も残した。
例題
- ( )は「万物は流転する」と唱えた。
- ピタゴラスは万物の根源を( )とした。
- オデュッセイアの著者のもう一つの大作は( )である。
- 根源をギリシア語で( )という。
- デモクリトスはすべてのものの最小単位は( )であると説いた。
解答
- ヘラクレイトス
- 数
- イリアス
- アルケー
- 原子(アトム)
解説
- ヘラクレイトスは火をアルケーと考え、世界は常に変化するとした。ヘラクレイトスはピタゴラスの考えに懐疑的だったという。
- ピタゴラスはピタゴラス学派という宗教的な教団をつくりながら、数を万物の根源であるとした。
- ヨーロッパ最古の詩人であるホメロスは「イリアス」と「オデュッセイア」を残した。
- 自然をつくっている源をアルケーという。
- デモクリトスはアトムという「それ以上分割できないもの」を万物の根源とした。世界は空虚(ケノン)であり、アトムはケノンを動きまわり、結合と分離をくりかえすという。
例題
- エンペドクレスが万物の根源としたものはなにか。
- ミレトス学派を代表する思想家を三人答えなさい。
- 「神統記」の著者は誰か。
- ミレトス出身で日食を予言した自然哲学者を答えなさい。
- 「ロゴス」を表す漢字二文字の言葉はなにか。
解答
- 火、水、土、空気
- タレス、アナクシメネス、アナクシマンドロス
- ヘシオドス
- タレス
- 理性
解説
- エンペドクレスは他の学者と異なり、四つの元素をアルケーとした。
- ミレトスはギリシアの植民都市で、エーゲ海沿岸にあった。
- ヘシオドスは「神統記」と「仕事と日」の著作者である。
- タレスは日食を予言するほど幾何学や天文学に長けていた。円の直径は直角の円周角をつくるというタレスの定理を発見した。
- 理性をロゴスという。同様に知恵をソフィア、神話をミュトス、宇宙をコスモスという。
問題1
以下の空欄に当てはまる言葉を入れなさい。
- ( )はデルフォイの神殿で最も賢いという神託を受けた。
- 「万物は流転する」と唱えた人物は( )。
- ピタゴラスは万物の根源を( )とした。
- オデュッセイアの著者のもう一つの大作は( )。
- 植民市の地名でもあり、タレスなどが属する学派を( )学派という。
- 紀元前5世紀頃に現れた、相手を説得する弁論術に長けた人々を( )と呼ぶ。
- プラトンが唱えた永遠不滅の真実を( )という。
- プラトンの国家論では( )、( )、( )の三つの階級があり、それぞれの階級がそれぞれに合った徳を身につける時に理想が達成されるとした。
- イデアを想起することを( )という。
- イデア界と現象界の区別は( )の比喩でしばしば説明される。
- アリストテレスは徳を( )と( )に分けた。
- アリストテレスは、最高善は( )であると考えた。
- アリストテレスはポリスで生きている人間を( )と呼んだ。
- ヘレニズム期に登場した禁欲的思想を( )という。
- ソクラテス以前の哲学者のうち、輪廻転生を信じていた人物は( )。
- 『根源』をギリシア語で( )という。
- デモクリトスはすべてのものの最小単位は( )であると説いた。
- ( )は『労働と日々』を著した。
- プロタゴラスは( )という有名な言葉を残し、真実は各人によって異なると主張した。
- 対話を通じて相手に無知を自覚させる方法を( )という。
- プラトンによれば、人間の思いこみをカタカナ三文字で( )という。
- イデアにはいろいろなものがあるが、中でも( )は最高のものとされる。
- ギリシア四元徳は( )、( )、( )、( )。
- 形相をカタカナ四文字で( )という。
- 質料をカタカナ四文字で( )という。
- アリストテレスは良い習慣として( )をあげた。これは極端な状態を避けよという意味である。
- アリストテレスの説いた部分的正義には( )的正義と( )的正義がある。
- エピクロスは精神的快楽を重視したが、この状態を( )という。
- 「自然に従って生きよ」と主張した思想は( )である。
- 情念に惑わされず、理性に従っている状態を( )という。
- 万物の根源は水と主張した思想家は( )。
- 観想をギリシア語で( )という。
- 「真実はわからない上に伝えられない」と説いた古代ギリシア思想家は( )。
- アリストテレスはポリス的動物である人間に必要なものは( )と( )であるとした。
- ヘラクレイトスはアルケーを( )と考えた。
- ギリシア世界では徳をカタカナ四文字で( )という。
- ソクラテスがアテネの神殿から受けた神託は、ソクラテスが( )を自覚しているがゆえに賢いというものだった。
- プラトンは永遠に変わらないものを( )と名付け、人間がリンゴをリンゴとして認識できるのは自身の魂にあるこれを想起するからだと説明した。
- プラトンのイデア論では、魂がかつていたイデアの世界に行きたいという願いを( )という。
- アリストテレスは、あらゆるものの運動は( ① )という目的を持っている、すなわち( ① )に向かって変化することだと考えた。
- アリストテレスは( )的生活を送ることで幸福になれるとした。
- ストア派は( カタカナ三文字 )を遠ざけて( カタカナ三文字 )に従って生きることを重視した。
- ( )は土、水、火、空気の四つを万物の根源と考えた。
- ミレトス学派を代表する思想家を三人答えなさい。
解答
- ソクラテス
- ヘラクレイトス
- 数
- イリアス
- ミレトス
- ソフィスト
- イデア
- 統治者階級、防衛者階級、生産者階級
- アナムネーシス
- 洞窟
- 知性的徳、習性的徳
- 幸福
- ポリス的動物
- ストア派
- ピタゴラス
- アルケー
- アトム
- ヘシオドス
- 人間は万物の尺度
- 問答法
- ドクサ
- 善のイデア
- 知恵、勇気、節制、正義
- エイドス
- ヒュレー
- 中庸
- 調整、配分
- アタラクシア
- ストア派
- アパティア
- タレス
- テオーリア
- ゴルギアス
- 正義、友愛
- 火
- アレテー
- 無知
- イデア
- エロース
- 形相
- 観想
- パトス、ロゴス
- エンペドクレス
- タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネス
問題2
以下の各文の正誤を判定しなさい。
- デモクリトスは「万物は流転する」といい、その根拠として万物の最小単位アトムを説明した。
- ホメロスはギリシア神話をテーマにしたイリアスを記したとされる。
- ソクラテスの問答法は、相手との議論や討論を重ねて相手に不足していた知識を与えることをいう。
- プラトンはこの世をイデア界と現象界の二つに分け、イデア界にある様々なイデアが真実であり、中でも善のイデアが最高のものであるとした。
- プラトンは知恵、節制、正義の三つを徳として、知恵と節制を身につければ正義が達成されると考えた。
- アリストテレスは、極端な状態を避けて中庸を目指すように日々心がけていれば習慣的徳はやがて身につくとした。
- アリストテレスが説いた『ポリス的動物』としての人間には正義と友愛の二つは不可欠であり、正義は部分的正義と配分的正義の二つに分けると唱えた。
- ストア派のゼノンは禁欲的思想から「隠れて生きよ」という言葉で理性に従う生き方の重要性を示した。
- 世界の根源は数であると考えたピタゴラスは同時に輪廻転生を信じていた。
- 古代ギリシアの哲学者たちはテオーリアを通して自然を分析し、そのうちの一人タレスはアルケーを水であると考えた。
- プロタゴラスは「人間は万物の尺度である」としてあらゆる価値基準は人によって変わらない普遍的なものとした。
- ソクラテスがアテネの神殿で「ソクラテスが最も賢い」という神託を受けたが、それはソクラテスが誰よりも知識を持ち、かつそれを実践しているからであった。
- プラトンの想起説を正しいとすると、目の前にあるものがリンゴであるとわかるのは、それがリンゴであると教えられたからでなく、自分の中にあるリンゴというイデアを想起するにほかならない。
- プラトンは人間の魂を欲望的部分、気概的部分、理性的部分の三段階に分けて、それぞれが国家の階級に対応しているとした。
- アリストテレスは享楽に陥らず観想的生活を送ることが幸福そのものであると説いた。
- アリストテレスは王政、貴族制、共和制のそれぞれを分析した上で、共和制は衆愚政治に陥る危険があるから王政または貴族制であるほうがいいと考えた。
- エピクロス派はアタラクシアという理想状態に至るために公から身を引いた苦痛のない生活を心がけるよう説いた。
- ストア派の禁欲主義ではパトスに従う生き方が理想とされる。
解答
- × (「万物は流転する」と主張したのはヘラクレイトス)
- ○
- × (ソクラテスの問答法は相手との討論を重ねて相手に『無知の知』を自覚させること。知識を直接与えるものではない)
- ○
- × (知恵、勇気、節制、正義がギリシア四元徳であり、知恵と勇気と節制を身につければ正義となる)
- ○
- ○
- × (「隠れて生きよ」はエピクロス派。ゼノンが創始したストア派は「自然に従って生きよ」)
- ○
- ○
- × (プロタゴラスは確かに「人間は万物の尺度である」と言ったが、価値基準は人によって異なると考えた。「人間は万物の尺度である」はそもそも相対主義をさす)
- × (ソクラテスが賢いという神託を受けたのは、自身がなにも知らないことを知っていたから。これを無知の知という)
- ○
- ○
- ○
- × (アリストテレスは王政と貴族制もまた共和制の衆愚政治と同じようにある種の堕落した形態が存在すると考えており、優劣は特につけていない)
- ○
- × (パトスでなくロゴスが正解。パトスとは情念であり、パトスにふり回された生き方はストア派の目標とする生き方と相反する)