クラウディウス皇帝の時代にローマ軍が上陸し、約400年間の統治が始まる。
イギリスの歴史は、古代から現代にかけて複雑で豊かな発展を遂げてきました。ここでは主要な時代区分に沿って概観していきます。
古代・中世初期(紀元前~1066年)
最初期のイギリスには、ケルト系の部族が住んでいました。紀元43年にローマ帝国がブリテン島を征服し、約400年間統治します。ローマ撤退後は、アングロ・サクソン族が移住し、複数の王国を形成しました。
ローマ帝国の衰退により軍が撤退し、ブリテン島の統治が終了。
ゲルマン系のアングロ・サクソン族がブリテン島に移住し、複数の王国を建設。
聖アウグスティヌスがカンタベリーに到着し、本格的なキリスト教布教が始まる。
北欧のヴァイキングがリンディスファーン修道院を襲撃、以後継続的に侵入。
ウィリアム1世(征服王)がヘイスティングスの戦いでハロルド王を破り、イングランドを征服。
中世・封建制の確立(1066年~1485年)
ノルマン征服により、フランス系のノルマン朝が成立し、封建制が本格的に導入されました。この時代は王権と教会権力、貴族との間で複雑な権力闘争が続きます。
ジョン王が貴族に強制された憲章で、王権の制限と法の支配の原則を確立。後の立憲政治の基礎となる。
フランスとの長期にわたる戦争。イングランドは最終的に敗北し、大陸の領土を失うが、国民意識の形成につながる。
ヨーロッパ全体を襲ったペストの大流行。イングランドでも人口の3分の1が死亡し、社会構造が変化。
重税に反発した農民が蜂起。ワット・タイラーが指導し、一時的にロンドンを占拠。
ランカスター家(赤薔薇)とヨーク家(白薔薇)の王位継承戦争。ヘンリー・チューダー(後のヘンリー7世)の勝利で終結。
チューダー朝とイングランド宗教改革(1485年~1603年)
ヘンリー7世が薔薇戦争に勝利してチューダー朝を開始します。特にヘンリー8世の治世は、英国史上最も重要な転換点の一つとなりました。
ヘンリー8世の離婚問題
ローマ教皇との決裂
首長法制定(1534年)
イングランド国教会の成立
エリザベス1世の時代(1558年~1603年)は「エリザベス朝黄金時代」と呼ばれ、文化的にも政治的にも大きく発展しました。シェイクスピアが活躍し、スペイン無敵艦隊を撃破して海上覇権を握る基盤を築きました。
ステュアート朝と政治革命(1603年~1714年)
スコットランド王ジェームズ6世がジェームズ1世としてイングランド王になり、ステュアート朝が始まります。この時代は議会と王権の対立が激化し、最終的に革命に至ります。
チャールズ1世と議会の対立が内戦に発展。クロムウェルが指導し、王を処刑。共和制を樹立するも、1660年に王政復古。
ジェームズ2世のカトリック政策に反発した議会が、プロテスタントのウィリアム3世とメアリー2世を招聘。無血で王朝交代を実現し、立憲君主制を確立。
大英帝国の繁栄(1714年~1914年)
ハノーヴァー朝の下で、イギリスは産業革命の先駆者となり、世界最大の帝国を建設しました。
18世紀半ばから始まった産業革命により、イギリスは「世界の工場」と呼ばれるまでになり、蒸気機関の発明、鉄道建設、工場制手工業の発達が社会を大きく変化させました。
手工業から機械工業への転換により生産性が飛躍的に向上した一方、労働者階級の形成と都市問題が深刻化。
正式にグレートブリテン王国が成立。
ジェームズ・ワットが蒸気機関を改良し、工場制生産が広まる。
ワーテルローの戦いでナポレオンを破り、ヨーロッパの均衡回復に主導的役割。
産業資本家に選挙権を拡大し、政治的発言力を強化。
大英帝国が最盛期を迎え、「日の沈まない帝国」と呼ばれる。
ドイツとの対立が激化し、世界規模の戦争に突入。
現代イギリスの形成(1914年~現在)
二度の世界大戦を通じて、イギリスは世界的な影響力を維持しながらも、帝国の解体と国内改革を余儀なくされました。
ドイツ・オーストリア・オスマン帝国との戦争で勝利するも、膨大な犠牲と戦費により国力が消耗。女性参政権獲得のきっかけにもなる。
1929年の世界恐慌の影響で失業率が急上昇。1924年と1929年に労働党政権が誕生し、社会保障制度の基盤が築かれる。
チャーチル首相の下でナチス・ドイツと戦い、最終的に勝利。しかし戦後は経済的困窮と帝国の解体が加速。
戦後労働党のアトリー政権が国民保健サービス(NHS)を創設し、「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家を構築。
マーガレット・サッチャー首相が新自由主義政策を推進し、国営企業民営化と規制緩和を実施。「英国病」からの脱却を図る。
2016年の国民投票でEU離脱が決定し、2020年に正式に離脱。現代イギリスの新たな方向性を模索中。
現在のイギリスは、グローバル金融センターとしてのロンドンの地位、英語圏諸国との文化的つながり、そして歴史的遺産を活かしながら、21世紀の国際社会における役割を再定義している段階にあります。長い歴史を通じて培われた議会制民主主義、法の支配、そして多様性への寛容さは、現代においてもイギリス社会の重要な特徴となっています。