キリスト教と新約聖書:イエス、パウロ、アウグスティヌス(高校倫理・世界史)
キリスト教はイエス・キリストが広めた宗教で、旧約聖書と新約聖書を聖書とする。旧約聖書はユダヤ教の聖書でもある。
旧約聖書 … 神とイスラエル人の契約
新約聖書 … イエスをキリストとする新しい契約
イエスはベツレヘムに生まれ、30歳ころにヨルダン川の近くでヨハネから洗礼を受けた。
新約聖書の構成
- マタイの福音書
- マルコの福音書
- ルカの福音書
- ヨハネの福音書
新約聖書はマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの福音書などから構成される。新共同訳聖書には次の書物が収められている(以下順番どおり)。
- マタイの福音書
- マルコの福音書
- ルカの福音書
- ヨハネの福音書
- 使徒言行録
- ローマの信徒への手紙
- コリントの信徒への手紙
- ガラテヤの信徒への手紙
- エフェソの信徒への手紙
- フィリピの信徒への手紙
- コロサイの信徒への手紙
- テサロニケの信徒への手紙
- テモテへの手紙
- テトスへの手紙
- フィレモンへの手紙
- ヘブライ人への手紙
- ヤコブの手紙
- ペトロの手紙
- ヨハネの手紙
- ユダの手紙
- ヨハネの黙示録
イエス
イエスがいた当時、ユダヤ教のパリサイ派が大きな力を持っていた。イエスはパリサイ派の形式的な律法主義を批判(『ルカによる福音書 - 律法と神の国』)しながら、福音や隣人愛について説き、最後はローマ帝国の法によって処刑された。
Vicente Juan Masip - The Last Supper
イエスは神への愛と隣人愛について説いた。隣人愛は「自分を愛するように隣人(他人)を愛しなさい」という教えである。
律法主義への批判
『ルカによる福音書』などでイエスがパリサイ派の律法主義を批判している場面がある。
金に執着するファリサイ派(パリサイ派)の人々が…イエスをあざ笑った。そこで、イエスは言われた。「あなたたちは人に自分の正しさを見せびらかすが、神はあなたたちの心をご存知である。…律法と預言者は、ヨハネの時までである…(『ルカによる福音書(新共同訳)』)
しかしイエスは律法を否定したわけではなかった。
「わたしが来たのは律法や預言者を廃止するためだ、と思ってはならない。(『マタイによる福音書(新共同訳)』)
神の国と福音、隣人愛、神の愛
ヨハネが捕らえられた後、イエスはガリラヤへ行き、神の福音を宣べ伝えて、「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさい」と言われた。(『マルコによる福音書(新共同訳)』)
イエスは「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい(マタイによる福音書)」と述べて、隣人愛について説いた。
神は人を平等に愛している。神の愛(「アガペー」という)は無差別であり、だからこそ人は平等である。
ユダの裏切り
イエスの活動はさまざまな困難をともない、多くの反発を招いた。イエスと一緒にいたイスカリオテのユダはイエスに選ばれた十二人の使徒の一人だったが、イエスを裏切って祭司にイエスを引きわたした。ユダの裏切りによって、イエスはゴルゴダの丘で十字架にはりつけられて死んだとされる。
そのとき、十二人の一人で、イスカリオテのユダという者が、祭司長たちのところへ行き、「あの男(イエスのこと)をあなたたちに引き渡せば、幾らくれますか」と言った。そこで、彼らは銀貨三十枚を支払うことにした。そのときから、ユダはイエスを引き渡そうと、良い機会をねらっていた。(『マタイによる福音書(新共同訳)』)
ユダは裏切ったことを後悔し、銀貨三十枚を祭司長たちに返そうとしたが拒否され、首をつって死んだ。
そのころ、イエスを裏切ったユダは、イエスに有罪の判決が下ったのを知って後悔し、銀貨三十枚を祭司長たちや長老たちに返そうとして、「わたしは罪のない人の血を売り渡し、罪を犯しました」と言った。しかし彼らは、「我々の知ったことではない。お前の問題だ」と言った。そこで、ユダは銀貨を神殿に投げ込んで立ち去り、首をつって死んだ。(『マタイによる福音書(新共同訳)』)
祭司長たちは銀貨三十枚で「陶器職人の畑」を買い、外国人の墓地にした。この畑は「血の畑」と言われることになった。
イエスの死後
イエスの死後、イエスは復活したという信仰が生まれた。イエスは救世主(キリスト)であり、最後の審判を行うといった考えが「原始キリスト教」として受けつがれていった。原始キリスト教はエルサレムを中心に形成されていった。
キリスト教に関係する重要人物
パウロ
キリスト教はパウロとアウグスティヌスによってダイナミックに広がる。パウロはもともとイエスを迫害する立場をとっていたが、復活したイエスの声を聞いてからキリスト教を信仰する(回心)ようになる。
イエスが律法主義を批判したように、律法よりも信仰が義になるという信仰義認説を唱えた。
わたしたちは生まれながらのユダヤ人であって、異邦人のような罪人ではありません。けれども、人は律法の実行ではなく、ただイエス・キリストへの信仰によって義とされると知って、わたしたちもイエス・キリストを信じました。(『ガラテヤの信徒への手紙(新共同訳)』)
パウロによれば、人は原罪をおっている。原罪とはアダムとイブが神の命令に反してから、すべての人が最初からもっている罪である。イエス・キリストはこの原罪をあがなう(贖罪)ために十字架にはりつけられた、とパウロは説いた。
パウロは信仰、希望、愛の三つを徳としたが、中でも愛を重視した。
たとえ、預言する賜物を持ち、あらゆる神秘とあらゆる知識に通じていようとも、たとえ、山を動かすほどの完全な信仰を持っていようとも、愛がなければ、無に等しい。…(略)…信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である。(『コリントの信徒への手紙(新共同訳)』)
アウグスティヌス
アウグスティヌスはキリスト教最大の教父とみなされており、『神の国』や『三位一体論』を著してその後のキリスト教思想に大きな影響を与えた。高校の倫理ではアウグスティヌスの三位一体論がとりわけポイントになる。これは神、イエス、精霊が同一であるという理論である。
アウグスティヌスはパウロの三元徳をプラトンの四元徳の上においた。アウグスティヌスによってキリスト教はローマ帝国の国教となった。
トマス・アクィナス
トマス・アクィナスは神学者であり、アリストテレス哲学を使ってキリスト教を研究した。信仰と理性を区別し、理性の上に信仰をおいた。
キリスト教関連の豆知識
アウグスティヌスの母の名前
アウグスティヌスの母はモニカという名前の女性で、キリスト教教会から聖人として最大の敬意を受けています。アメリカのサンタモニカという土地はこのモニカを由来としています。