ここまでの門は膜電位で開きました。ニコチン性 ACh 受容体は違います。膜電位がどう動こうと開かず、アセチルコリンという分子が結合したときだけ開きます。
5 個のサブユニットが環のように並び、中央に陽イオンの孔があります。細胞外側には大きな前庭部があり、その中の 2 か所がアセチルコリンの結合部位です。図の 2 つの丸がそれで、2 分子そろって初めて開きます。1 分子では開きません。
開くまでは数十マイクロ秒、開いたあとは 1 ミリ秒ほどで自分から閉じます。シナプスに放たれた伝達物質はすぐ分解されるので、開きっぱなしにはなりません。
この孔には選択フィルターらしいフィルターがありません。陽イオンでありさえすれば通すので、Na⁺ も K⁺ も同じように通ります。
両方を同じくらい通す孔では、膜電位はどちらの平衡電位でもない、その中間へ引かれます。それが 0 mV あたりで、これを逆転電位といいます。
静止電位は -65 mV ですから、0 mV との差は大きく開いています。この差が入る向きの力になるので、静止電位では入る Na⁺ のほうが出る K⁺ より多くなります。正味では細胞内へ正電荷が入り、膜電位は浅くなります。
この脱分極を終板電位といいます。神経筋接合部での名前で、一般のシナプスでは興奮性シナプス後電位、EPSP と呼びます。
高さは、開いた孔の数で決まります。放たれた伝達物質が多ければ高く、少なければ低い。活動電位と違い、大きさが刺激の強さに応じて変わります。
図の 2 本がその違いです。閾値に届かなければ、そのまま静止電位へ戻ります。届けば、そこから先はこの受容体の仕事ではありません。近くの電位依存性 Na⁺ チャネルが開き、活動電位が立ち上がります。
受容体は、分子で伝わってきた合図を膜電位に変えるところまでを受け持ちます。その先を運ぶのは、いつもの電位依存性チャネルです。
クラーレは矢毒として使われてきた物質で、この受容体を効かなくします。ただし、孔に栓をするわけではありません。結合部位に先に座り、アセチルコリンが来ても付けなくします。競合的な阻害です。
テトロドトキシンが Na⁺ チャネルの口を塞ぐのとは、止め方が違います。塞ぐのではなく、開ける合図を届かなくする。結果として終板電位そのものが立たず、筋は収縮しません。
同じ場所が関わる病気もあります。重症筋無力症では自己抗体が受容体の数を減らすので、同じ量の伝達物質でも終板電位が閾値に届かなくなります。
逆の効かせ方もあります。スキサメトニウムは結合したまま開けっぱなしにし、受容体を開かない脱感作状態へ追い込みます。開かせて効かなくする、というやり方です。