電位で開く、と言われても、電気がどうやって形を変えるのかが分かりません。答えは単純で、動く部品が電荷を持っているからです。
チャネルの膜貫通部分のうち、S4 と呼ばれるヘリックスには、アルギニンとリシンの正電荷が数個ならんでいます。静止しているあいだ、膜の内側はマイナスですから、この正電荷は内側へ引かれて下がっています。脱分極して内側のマイナスが減ると、引く力が弱まり、S4 は外向きへ滑ります。
滑った S4 は、つながっている活性化ゲートを引き開けます。電位が形に変わるのはこの 1 か所だけで、あとはその形の変化が孔まで伝わっているだけです。
Na⁺ チャネルは 1 本のタンパク質に同じ作りのドメインが 4 つ並んでいて、4 つぶんがそろって初めて通ります。だから開口確率は m³ に比例します。シミュレーターの断面で名前の下に出ている m³ の数値が、その開き具合です。
孔が開くと Na⁺ が流れ込みます。Na⁺ はプラスですから、入るほど膜電位は浅くなります。浅くなればチャネルはもっと開き、もっと開けばもっと入ります。
この輪がいったん回りだすと、途中で止まりません。刺激を弱くしても、強くしても、越えたあとに起きることは同じです。閾値というのは、この輪が自分で回りはじめる境目のことで、シミュレーターでは -55 mV に引いてあります。
閾値に届かなければ、膜電位は少し浅くなって、そのまま静止電位へ戻ります。届けば毎回同じ高さまで駆け上がります。刺激の強さは、活動電位の大きさではなく、起きるか起きないかだけを決めています。
開いた 1 から 2 ミリ秒後、同じチャネルが自分で通り道を閉ざします。ただしこれは、開いた門が閉じたのではありません。門は開いたままです。
細胞質側にぶら下がっている IFM モチーフが、細胞内側から孔に嵌まり込んで栓をします。これが不活性化です。図で下から上がってくるボールがそれで、S4 は上がったままにしてあります。電位は浅いのに通れない、という状態がここで作られます。
この栓は、膜が再分極するまで外れません。ですから活動電位が通り過ぎたばかりの膜は、どれだけ強く刺激しても次の活動電位を出せません。不応期と呼ばれるものの正体は、この栓が抜けていないことです。
開く仕掛けと塞ぐ仕掛けが別々に、時間をずらして働く。この 1 点が、Na⁺ チャネルがほかのチャネルと違うところです。
K⁺ チャネルの電位センサーも同じ S4 ですが、構造変化がゆっくりです。しかも 4 つのサブユニットすべてが開いて初めて通るので、開口確率は n⁴ になります。結果として、Na⁺ 電流から数ミリ秒遅れて立ち上がります。
図の下の枠が、その 2 つの開き具合です。m³h の山が先に立ち、n⁴ の山が遅れて立つ。先の山だけが立っているあいだ膜電位は跳ね上がり、あとの山が追いつくと引き戻されます。
K⁺ チャネルは閉じるのも遅いので、膜電位は静止電位を通り越して下まで行きます。これが後過分極です。上の枠の終わりで線が静止電位より下へ潜るのは、そのためです。
活動電位という 1 つの山に見えるものは、ずれて重なった 2 つの山が作っています。どちらか一方だけでは、この形にはなりません。